「自己病衛」という新語
【やまとのぶはる】 はる研究院代表
(研究者、スーパーシンクタンクマスター)
山口県萩市生まれ。広島大学大学院修士課程( 実験心理学) 修了。
詳しいプロフィールは前号参照
◆著書に「和の実学」「企業理念」
「心の自立」「益源」などがある。
大和信春氏の著作には、与欣、心価、益源、和合工学、善苦悪快、成人要目など、彼の作った漢字熟語がいくつもでてくる。それらを作ることで説明がしやすいからだという。
そして、私がある話をしたのをじっと聞いて、「思いついてからすぐに書くのは、あまりよくないんですけどね」と笑いながらボールペンを取り出し、「自己病衛」と紙に書いて示した。
場所はいつもと同じ、博多バスターミナルビル8階のグラーノである。この店は店員の愛想がとてもよく、大和氏の宿泊するホテルからも近い。
私の話というのは、取材の過程で耳にした、自意識の強い三十代の女性のことである。
その女性は大学を卒業したあといろんな技能を身につけて社会人になったが、仕事に成果が出せなくて不眠になり、感情も不安定になって周囲とうまくいかず、精神科で診てもらったら軽いうつ病だと診断されて薬を処方された。彼女は翌日それを同僚に、上機嫌で話したという。仕事がうまくいかないのは能力が足りないのではなく、病気のせいだったと説明したそうだ。
その話を聞いて大和氏は「自己病衛」という言葉を思いついたのである。
おそらく自己病衛という言葉はこのとき誕生した新語だろうが、なるほど使い勝手がよさそうだ。彼女の例に限らず、病気に至らないまでも、いろんな場面に潜んでいそうである。
大和氏はそのあと、心が弱かったり迷ったりして先に進めない人に助言することへの危惧として、助言する人に問題解決学が備わっていなければ、せいぜい処世術や人生哲学を語るくらいしかできず、正解へは導けないし、相手の話をじっくり聞くだけの傾聴も、それで相手にやる気が出たとして、その後の行動の良質性は保証しないよと逃げているようなものだと言った。
それを聞いて、特に若い人に対する助言や傾聴を善意だけで行なった場合、意に反して大きな勘違いを生じさせ、それを放置してしまう可能性もあることに気がついた。
夜も深まってきたので最後に私から、この連載を読んでいる会社役員から、博多での経営免許講座に参加したいと問い合せが来ていることを伝え、次の講座開催日と会場を聞いた。