ブリックホールで市民公開講座 妊娠・分娩と産科医療補償制度
11月8日から2日間、長崎ブリックホールで第57回日本生殖医学会総会が開催された。テーマは「家族のきずなを求めて」。
会長の増崎英明長崎大学大学院医歯薬学総合研究科産婦人科分野教授は、大会に向けてのあいさつで、「生殖医療によって産まれた新しい生命は世代を超えて引き継がれるから、生殖医療の是非は後の世代の視点からも常に検証され続けなければならない。すなわち生殖医療の現場に未だ存在していない子供たちの視点
を常に念頭におく必要がある」とし、「命はガラスのように繊細だが、鋼のように強靭でもある。そのことは胎児や新生児の躍動と脆さを見れば分かる。日本生殖医学会の担うべき使命は、このような命の創出と継続に関わり、健全な生殖を支援し、健やかな後の世代を創出する仕事」とした。
10日には同会場で市民公開講座が開かれ、増崎会長のあいさつのあと、第1部で「妊婦健診の重要性と限界」について、産婦人科宮村医院(長崎市橋口町)の宮村庸剛院長と、花みずきレディースクリニック(同住吉町)の宮本正史副院長が講演した。座長は長崎大学産婦人科の三浦清徳准教授が務めた。
講演で宮村院長は、日本の妊婦健診の歴史と健診項目について説明し、「妊婦健診は、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)を早く知るためだったと先輩から聞いたことがある。今重要視されているのは早産だが、妊婦健診の基本項目でそれを知るのは困難」と述べたほか、「平成20年から14回の健診に公費補助が出るようになったのは少子化対策のため」と話した。また、「これだけの妊婦健診で脳性麻痺ではないという確信が持てるかというと、とてもむつかしい。原因が分からないから予知もできない」とも語った。
続いて宮本副院長が、「母子ともに元気であれという気持ちは皆に共通」と語り、表を示して、日本の新生児や乳児の死亡率が諸外国に比べて非常に低いことを説明した。
また胎児の心拍を連続的に記録して何が分かるかについて、死産や脳障害の残る割合が減ると期待されたが、思ったほどの成果は上がっていないと話した。
妊娠5か月の女性から「健診でたまに3千円ほど払う。何の費用か」との質問があり、宮村院長は「毎回超音波検査をしているのではないか。医師として必要だと考えているはず」と答えた。
第2部のテーマは「医療紛争の現場から見た参加医療補償制度」。医療訴訟や示談交渉を多く担当してきた福崎博孝弁護士が講演した。
最後に昭和大学産婦人科の岡井祟教授と北海道大学産婦人科の水上尚典教授が、参加医療補償制度の運用実績と、もたらす成果について、それぞれ話した。
若い女性の聴講者が多く、自分のことのように聞いているようだった。
同じ会場で11月8日から2日間、「第49回 日本臨床生理学会総会」が行われた。