臨床心理士の想い8 【坂梨圭】

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社会のニーズの変容(1)

阪神・淡路大震災の後、臨床心理士の認知度は急激にあがった。そしてPTSDのことも誰もが知ることになった。今回の東北大震災においても、心のケアの重要性、放射能の恐ろしさを誰もが再認識することとなった。

人々の知識と理解は、大きな事象が起こるたびに広がり深まっていく。しかし、その対応策が現実の社会の中に浸透していくには大きなタイムラグが生じる。

マスメディアからではなく、身近で理解する方法として、研修会や講演会がある。筆者は臨床心理士であり、教育経営学も専門としているために、幼稚園から大学教員、公務員、企業、医師会、そして一般から研修や講演の依頼が多い。

5年前、ある企業から、メンタル面での1日研修を依頼された。その打ち合わせで「ストレスマネジメント―セルフケアからラインケア」をテーマとして、体験型の研修はどうかと提案した。

しかし担当者の表情は違っていた。「うちの会社にメンタル面で弱い社員はいない。別のテーマにしてほしい」とのことだった。別の理由もあった。メンタルヘルスにすると企業イメージが損なわれると心配していたのである。

そこで「モチベーションアップとメンタルヘルス」はどうかと再提案した。モチベーションアップなら企業の利潤追究と合致するので、やっと了解された。内容は一任されたため、1日8時間のプログラムを組むことにした。

当日私は管理職20名に、イメージ論、リーダー論、モチベーションアップ論を話し、ストレスマネジメントの体験型の研修を行なったが、一番反応がよかったのはストレスマネジメントだった。

研修会のあとの懇親会でいろいろな参加者が話しかけてきた。

「実はうちの課にうつ病社員が数名いる。どうしたらいいか教えてほしい」。「数年前、部下が自殺して対応に困った」。

フォーマルな研修会では出てこなかったいろんなニーズがでてきた。

組織はイメージが大切である。人間は印象で判断する。実態を外部に知られたくないという心理が働くのは当然だろう。2年目からはメンタルヘルス中心に研修を組むことができるようになった。

昨今は「うつ病の対応方法」、「自殺予防」、「ストレスマネジメント」などダイレクトなニーズの研修会・講演会の依頼が多くなった。内容もこちら任せではなく、組織の実態に合わせたものである。若手職員・管理職などキャリアに合わせた研修会の依頼も増えた。

私の場合はほとんど体験型・双方向型である。話だけだと10分間で眠くなる。研修会をするからには実のあるものにしたいので、準備に120%時間をかけ、当日はレディネスとニーズに合わせて、80%程度に抑えて展開をする。直前の打ち合わせで内容をすべて変えたこともある。

以前の研修会と変わった点は、研修会のあと、自分や同僚のことでの相談が増えてきたことである。また、テレビの影響か、「新型うつ病」への対応の質問である。

メンタルな面は一般原則だけではアドバイスできない。ひとりひとり状況が違うからである。できるだけていねいに答えたいが、新型うつ病など私もわからないことが多い。研修をするたびに宿題が増える毎日である。


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