国境をめぐって、特に中国からの抗議が激しい。
日本大使館が襲撃された時に北京にいた中国通の知人に聞いてみると、「暴徒」らは事前に近くの公園に集められ、主催者からペットボトルや卵を配られて、卵は高価なために持ち帰る人もいたという。つまり抗議というよりは演技に近く、付近住民はずいぶん迷惑したようだ。
中国の人口は日本の約10倍。人口比で見れば、数万人の反原発デモが首相官邸を取り巻いた日本の方が民衆の声は大きそうだが、こちらも金曜日だけ行なわれ、あとの日は何とも思っていないわけだから、ただのファッションだ。あほらしい。
中国からの抗議は、ほんの一時、日本人の気を揉ませただけに見える。しかし深刻な背景も潜んでいる。というのは70年前まで、日本が圧倒的な軍事力と経済力で中韓両国を支配し、家長のごとく振る舞っていた歴史があるからだ。
国境は土地の線引きではなく、軍事力と経済力で決まるという手本を日本が示してみせたため、彼らはそれを忘れずにいると考えたほうが正しい。「日本全土も中国のもの」という言葉は、中国政府の本心だ。
かつて韓国人の中学教師が私に、「対馬は韓国の領土だが、今は黙っている」と語ったことがある。それも本音だろう。
韓国人からすれば、日本人の先祖は朝鮮半島から渡ったので、長兄(中国)や次兄(韓国)に従って当然という感覚がある。
軍事力と経済力で国境が決まるとの観点に立つと、日本の未来は暗い。超高齢化で人口は減り、経済力は今の半分になって、日本が中韓の風俗国になる日も遠くないと言われている。これも過去に日本人がアジア諸国に行なったことである。
日本に最新鋭の戦闘機やイージス艦があっても、米国がパスワードを変更すれば機能しなくなる。日本が隣国にこぶしを振り上げても、そこから先は自国で決められない。
日本国民はどうかというと、隣国との国境・領土問題をテレビで知りはするが、なんとなく気分が重くなるのでチャンネルを切り替え、お笑い芸人が相方の頭を叩いたり身体的ハンデをからかう様子を見てげらげら笑い、飽食番組を間抜けな顔で見ているのが現実だ。
言わば「タイタニックが氷山にぶつかりそうな気配を感じつつも船内で乱痴気騒ぎ」といった様相で、それほど今の日本は内向きだ。まるでソドムの街である。
国のあり方や国防について日本人が心を一つにできる千載一遇の機会が到来したのに、一万回説明しても「説明責任を果たしていない」と言い張る日本人も少なくなく、国境くらいは守ろうという意識はほとんど見えてこない。
相手が左手で殴ってきたら右手で受けるのが防御の常識だが、日本人の中には「中国に乗っ取られるくらいなら米国の一州になるほうがまし」と冗談混じりに言って、何も起こらないうちから独立放棄を選ぶ大人も多い。これが日本の現状だ。
こと領土問題に関しては、思考の彼方に追いやれば消滅するわけではない。国際的な信用が中国よりも高いうちに、国境や領土に対する日本人の意思を、明確に示す必要がある。日本に都合が悪くて黙っていた事実は、今の中国にとっては都合のいい事実なのだ。(コバルト色の空)