「専門性がある」だけでなく、さらに「高める」

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熊本市民病院 首席診療部長 西村令喜

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Profile
◆1976 山口大学医学部医学科卒、同年熊本大学第2外科入局
◆1982 医学博士(熊本大学大学院医学研究科)
◆1985 熊本市立熊本市民病院外科医長
◆1993Heidelberg 大学で研修
◆2005 熊本市民病院乳腺内分泌外科部長、同年熊本大学医学部乳腺内分泌外科臨床教授
◆2008 熊本市民病院診療部長 ( 乳腺内分泌外科部長兼務)
◆2011 熊本市民病院首席診療部長
◆2012 崇城大学客員教授(薬学)を経て現在に至る。

「乳がんの専門医になるには、外科の専門をとらないといけないので、胃がん、大腸がん、心臓など、様々な手術と救急医療を経験しないと外科の専門医になれない。なおかつそのあと乳腺の専門医になる資格を得られる訳です。なかなかハードルが高いですが、将来を背負う若い人たちが出てきてほしいですね。」西村部長は開口一番、そう話した。

■乳がん治療について

乳がんは研究、治療が国際化されていて、診療ガイドラインは欧米諸国とほぼ同様、つまり世界レベルの治療が決められています。これは世界中で集められたデータを共有しているからできることで、日本乳癌学会もこのガイドラインを用いた診療をしています。基礎、臨床ともに新しいデータが日々出てきており、その中の有用なデータを精査して議論しながらガイドラインを作り上げています。

欧米の臨床試験では数千人の患者が参加して、日本も最近は試験への理解が高まっていますが、まだまだ患者には戸惑いがあるようです。欧米では患者団体も臨床試験の重要性の認識が高く、今の患者は未来の患者のために自分が参加するという側面が強く、現在の最新治療は前の世代の試験の恩恵を受けているので、そのことへの感謝の思いがあるわけです。

日本でも様々な臨床試験が行なわれて欧米に肩を並べるまでに近づいており、試験の中に日本のデータが反映されて、ドラッグラグも少なくなってきました。以前ですと、例えばハーセプチンはだいぶ遅れて入ってきましたが、先ごろアメリカで承認された分子標的治療薬のペルツヅマムは、来年春ごろにはわが国でも承認されるでしょう。

今アメリカのサンフランシスコで行なわれているASCOブレスト学会に、当院からも医師が発表者として参加しており、来年の3月にはスイスのザンクトガレンで乳がんの今後の治療方針を決める会議があります。世界中の医師と研究者が新しい基礎と臨床のデータに基づき、最先端の治療法についてコンセンサスを得ながら進めているのです。現在の乳がん治療のテーマは、バイオロジー(生物学的特性)の見極めを行ない、がんの性質を診断して治療するのが主流です。遺伝子検査または免疫染色でサブタイプを分けて、患者ごとに最適な治療法を選択しています。

先の第20回日本乳癌学会では9会場で6千人にご参加をいただきました。かつて乳がんは外科の一部に過ぎない時代もありましたが、女性ホルモンが関係して、ホルモンおよびレセプターについての研究が進み、研究領域も細分化されて、マンモグラフィー診断にしても撮り方や技術、エコーにも技師も参加し、それぞれの領域で専門性が高くなっています。抗がん剤、診断、手術、緩和などの各々に専門性をもたないと対応できない部分が増えてきました。

もちろん患者にすれば、乳がんの専門医といえば何でもわかる人でなければならないので、乳がんのことを十分理解した上で、さらに深い専門性を備えなければなりません。乳がんにオールラウンドでありつつ、深い領域を持つことが求められているのです。

他のがんと比べ、乳がんは40、50代の若い患者が多く、患者も必死で治したいとの思いから、医師に任せっきりではなく熱心に勉強してくるので、専門医でないと診れない時代になりました。患者の思いに一生懸命応えねばならないし、日進月歩の領域ですから日々勉強をしなくてはなりません。その一環として、より十分なフォローをするためにチーム医療が大切になります。乳腺の医師だけでなく、病理、放射線、精神科、看護師、検査技師、ソーシャルワーカーなど、乳がんに関わる者が各々の立場で患者をどのようにサポートしていくか、いかに患者の不安や不満をとりのぞくのかをチームで考えねばなりません。9月に福岡で開催されたサイコオンコロジー学会では、日本乳癌学会との合同シンポジウムを行ない、再発患者のサポートのために、乳腺外科の医師、看護師、臨床心理士が総合討論をしました。

私が乳がんに関わるようになった30年前と現在とは何もかもが違います。研究が進み、専門性が高まるに連れて、患者もそれを求め、専門医でもガイドラインに沿った治療をするとしないのとでは生存率が明らかに違うのです。専門性のない治療をすれば医師がしっぺ返しを受ける時代なのです。ですから、専門性があるではなくて、高めなければならないのです、患者のために。

■予防について

2000年から始まった、乳がんのマンモグラフィー検診は現在、40歳以上は2年に一回の検診が推奨され、全国の市町村で行なわれています。しかし受診率は30%前後にとどまっており、欧米が70〜80%であることを考えると不十分です。その理由は、自分の身の回りの人が乳がんになったからと受診に来る方は多いが、まだまだ他人事であって、関心が薄いことに原因があるかもしれません。

自覚症状がない段階、つまり微細石灰化の段階で乳がんが見つかる場合には、かなり早期の段階であり、手術をすると、ほぼ100%治ります。この段階で見つければ、どなたも乳がんで亡くなることはありません。

自分でできる予防法は、しこりの有無を確認して、2年に1回は必ずマンモグラフィ検診を受けること。早期に見つかれば亡くなることはないのです。乳がん予防は難しいが、二次予防が検診。自分のできることをしっかりして頂きたいと思います。家族歴がある、閉経後の肥満、授乳経験がないなどがリスクファクターとなることにも気をつけて頂ければと思います。


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