国際的な視野であり続けること、そして地場産業としての自覚忘れず

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

国際医療センター建設に寄せて

018.jpg

社会医療法人 雪の聖母会 聖マリア病院|島 弘志 しま・ひろじ
聖マリア病院 病院長久留米大学医学部臨床教授

―「国際医療センター」の工事が急ピッチで進んでいる。9月に完成し、元旦から本格稼働する。久留米の医療は変わるのか。国際色を出すには実際どうするのか。その問いに島弘志院長が答えた。取材には立花秀之副院長(=経営企画室長)も同席した。

◆国際医療へのこだわりと地域医療

当院は昭和60年代から、海外からの研修を引き受けたり、こちらが出向いて技術指導を行なったり、国際的な大災害への救急医療チームや、NPOを通じて災害救助支援をしてきた。

これまでに100か国以上の派遣や受け入れをしており、日本でもトップレベルの医療協力をしてきた自負がある。

病院の歴史の中で国際協力が大きなウェイトを占めているので、国際医療センタービルと呼びたいが、医療は地場産業であり、地域に根付かないと存在価値がないので、建物自体は地域医療支援棟という名前にしたい。地域に根ざして患者に選ばれる医療施設とすることが私たちのスタンスだ。

◆医療ツーリズム時代の到来にも供えて

現在、JCI(国際病院評価機構)を受ける準備を進めている。県と久留米市から医療ツーリズムの協力要請を受け、協力にはやぶさかでないと返事している。JCIがあれば他国から国際病院という認識をしてもらえる。国際という名前にはそういう意味合いもある。

今後さらにグローバル化が進むと、今までにない医療の見方が出てくる。来たるべき時に備えて態勢を整えておくことは重要だ。だてに国際協力を長くやってきたわけではない。

しかし我々は医療者だから、どれだけ質の高い医療を提供できるかが大切。患者がたまたま外国人でも、きちんと対応できることは我々の誇りとなるから、常に技術と感性は磨いておきたい。その点で日本の医療はまだ、諸外国から見向きもされていないのが現実だ。

019.jpg

020.jpg

基本的には地域の方々が、質の高い医療を通じて安心し、医療を通じて地域に資するが使命で、あくまでも医療ツーリズムは健診業務にプラスする形で行なうことになる。

新しい施設は急性期病院として、今後は専門外来と救急が中心になる。1階に救急、2階にオペ室、3階にICUという形にしている。各フロアも思い切った作り方をした。働く人が大きく動かなくて済むように設計。ナースステーションを中心に病室を配置したのもその一つ。(立花)

職員が仕事しやすい職場でなければ良い医療を提供できない。物理的な制限もあるが、20年、30年と使うのだから、そのころ働く職員に、こんなものを作りやがって、と言われないようにしたい(笑)。

だから教育をたゆまず

―時代が大きく変わる中で、病院も否応無しに変化が求められるのでは?

少子高齢化の社会で人口構成もずいぶん変わり、死生観や人生観も変化した。我々は患者や家族の思いを大切にしつつ、変化する疾病構造を理解し、適切に対応することが重要だと考えている。

―患者自体もずいぶん変わったと思うが。

患者のさまざまな主張は構わないが、患者が守るべき義務と表裏一体のはず。でも医療においては片方、つまり患者の言うがままにしか対応できないような法律になっている。そのことで医療者にストレスがたまり、場合によっては若い職員が大きな精神的ダメージを受けることもある。

医療は今後さらに、人に対する配慮が求められる。特に臨床の場合、患者に対して少しでも早く社会復帰させてあげたいと思っている人は言葉も選び、きちんとした態度で対応できる。そしてその気持ちは患者にも伝わるものだ。院長の本音としては、そういう職員ばかりにしたい。

―医療者を見る目も辛くなっている時代だが。

自分を高めることが仕事のレベルを上げることにつながる。病院はさまざまな職種で構成され、チーム医療としてすべての職種が患者に利益をもたらす。

各人がやるべきことをやり、昨日よりも今日、今日よりも明日というふうに自分自身のレベルを上げれば、チーム医療の結果もまた変わる。皆がそういう認識を持って仕事に取り組めば、すさまじくすごい病院になれる。

―千人以上の職員にその思いをどう伝えるのか。感度の低い職員にはシステムから入るのか。

専門教育をしっかりやるのは当然で、それ以外に接遇や、部下に伝えるための教育など、社会人教育を制度化した。

医療職の人は専門分野を懸命に頑張ってきたため、他の領域のことを知らない。人事制度を整えて、年3回くらいは面談してきちんと評価する制度を作った。(立花)

この3年間で管理体制や教育をものすごく変えた。人の命を預かるという命題があるから、安全管理と人材教育は常に高めている。日本中から第一人者の医師を招き、月1回講演してもらっているし、職種ごとの勉強会に、他職種の参加も増えてきた。ここ3年ぐらいでずいぶん変わってきた。

あいさつは家のしつけの問題だが、それすらできない人もいる。でも、この病院の職員だと胸を張って語るためには、きちんとやるべきだ。職場に入ったらプロの自覚を持つ必要がある。教育にはお金がかかるが、やり続ければいつか結実すると期待している。

―さきほどの「すさまじくすごい病院」のイメージは。

患者は不安な思いで病院に来る。それに対応した医療ができれば心から感謝してもらえる。私がいつも言うのは、職員が職場を問われた時、胸を張って答えられる、そういう病院にしたいというのが一番の思いだ。患者のために仕事をしている自分たちがきちんとせずに、いい医療の結果を出せるはずがない。そういう思いで変えていきたい。

病院は国家資格者の集団だ。努力してライセンスを取得した以上、努力の大切さは皆が知っているし、教育で変われるポテンシャルの高さを持っている。仕事は、継続して初めて社会的価値が生まれる。継続する努力と、質を高める努力。この2つはどちらも必要だ。

うちの病院に初めて就職した人は、それが当たり前だと思っているが、辞めて他の病院にいくと何もないので、びっくりして戻ってくる人が増えてきた。そういう意味でも、成果が出てきたのではないか。(立花)

私は、楽をするためにどうするかをいつも考えて仕事をしてきた。たとえ指示された仕事でも、それが不要だと思ったら、実際に止めて効果を検証する。効率的にやることをいつも考えて、多視点からみれば本当に必要なものが見えてくる。

組織も人も生き物だから、結果は構成する人たちの資質に関わってくる。皆が日々、ステップアップしたいという気持ちをもってくれることを期待し続けている。

【記者の目】
島院長には、昨年8月20日号にも登場してもらっている。前回は久留米への思いを中心に、病院改革の決意について聞いた。今回、世相を反映してか、厳しい表情を何度も見せたが、全体としてはなごやかに、時には笑いも交えてインタビューは進み、最後の「もっともっと良くしますから期待して下さい」のひと言が心に残った。(聞き手川本、写真佐藤)

九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る