いま薬剤師に求められるもの
福岡県薬剤師会 藤野哲郎会長
福岡県薬剤師会はさまざまな職域で活躍する薬剤師の職能団体で、県下23支部４千人を越える会員から構成される。９月16、17日の両日にわたり九州・山口の各県の薬剤師らが集う第74回九州山口薬学大会で実行委員長を務める藤野哲朗福岡県薬剤師会会長に、大会への意気込みなどを聞いた。
―規模の大きな大会になると聞きました
本大会は今年で74回目を数える伝統ある大会で、およそ６千人の参加を見込んでいます。
ドクターの不足が叫ばれる昨今、チーム医療として薬剤師を今まで以上に活用する必要性から、メインテーマを「今、薬剤師は求められている」としました。その一環として、特別講演に小倉記念病院の延吉正清院長、特定非営利活動法人ロシナンテスの川原尚行理事長をお招きしました。意義深いものになると確信しています。
今年は６年制になった薬学生が卒業を迎えた年でもあるため、大会は記念的な意味もあります。そこでサブテーマを「新薬剤師時代、シームレスな医療連携」と題し、シンポジウムも現役だけでなく新卒の学生にも登壇してもらいます。
大会準備のため会議の連続で、ようやく詰めの段階です。一番の目的は、出席者が参加して良かったと思える大会にすることですから、中身の充実をはからねばなりません。
―薬剤師の職域はずいぶん異なりますね
病院の薬剤師は院内で保険適用の医療用医薬品を扱うのが主業務で、外局の薬剤師はＯＴＣ医薬品販売（薬局やドラッグストアなどで販売される医薬品）、禁煙サポートや学校薬剤師活動などさまざまな業務に携わります。その意味で薬局と病院の薬剤師では感覚が異なる部分がありますから、出席者の期待に応えられる演題の充実をはかっています。
プログラムにある「薬剤師協議会の運営委員会」では各県の委員を集めて、６年制薬剤師の実習教育について協議していきます。病院研修と薬局研修が２か月半増えたことも踏まえ、知識偏重にならないよう、さらなる質の向上のために積極的な議論を行ないたいと考えています。
―薬局の将来像は
今はドラッグストアが多くなりましたが、大手資本が参入する前は個人薬局がほとんどでした。医薬分業が始まったのは昭和50年前後で、その前はＯＴＣ医薬品を扱う薬局がほとんど。現在のようなドラッグストアができて、大量・安価販売が主流となり、経営的に厳しくなったため、分業に移行しながら経営しているのが実情です。ただ、分業も限界に近づいており、将来的には１校区に１、２軒しか残れないかもしれません。生き残りのためにも、ＯＴＣ、健康食品、雑貨など、多岐にわたって扱う必要があります。
近頃は郊外に大型スーパーが進出し、小さな薬局やドラッグストアの撤退が起きています。そのために、町の中でお年寄りが医薬品を買える場所が減りつつあります。薬局の５年後を考え、分業だけでなく、すべての医薬品を薬剤師の責任で扱うべきだというのが私の基本的な考えです。セルフメディケーションが重要ですから、具合が悪くなったら病院にかかる前にまず薬局に相談してほしい。軽度なら治るし、難しいようなら、治療に最適な医師を紹介することもできます。健康や福祉、医療など、地域の方が健康について何でも相談できる「かかりつけ薬局」を作ってもらいたいと思います。今は本当の意味で地域密着の薬局について話している最中です。４月に着任したばかりなので、想いを伝えていくのはこれからです。
