長崎市の長崎ブリックホールで4月25日から同27日までの3日間、第86回日本感染症学会総会・学術講演会と第60回日本化学療法学会学術集会が同時開催され、全国からおよそ3千人が参加した。
4月28日には同会場で、市民公開講座「いざというときの感染症対策=日頃からの準備、基礎知識の習得」があり、100人の市民が耳を傾けた。
公開講座では松本哲朗産業医科大学病院長のあいさつに続き、感染症制御が専門の鈴木克典産業医科大学病院感染制御部助教が、「東日本大震災による福島第一原発事故で、産業医科大学から医師として派遣され、現地作業員たちの健康管理に従事した。産医大の医療チームの拠点場所は第1原発から200㍍しか離れていない重要免震棟内の医務室で、東京電力の対策本部も設けられていた。およそ200人の作業員は廊下などに雑魚寝し、食事もレトルト食品かパンという過酷な環境で、医療器具も十分ではなかったが、感染症対策に留意して奮闘した」などエピソードを語った。
続いて呼吸器病学とアレルギー学が専門の福島千鶴長崎大学病院臨床研究センター准教授が、長崎における過去の災害の歴史などをふまえ、いざという時にどう備えるべきかを講演。「長崎大学病院は原子力災害についての経験・知識の蓄積を活かし被災地で医療支援に尽力しており、私自身も南相馬市などにおける医療支援に携わった。震災のせいで受診が途絶えて不安を抱えた患者を診療して励ましたところ、涙を流し感謝されて、人の役に立ちたいという医師を目指した自分の原点を思い出した」などと話した。
最後に呼吸器病学、感染症学、感染制御学が専門の塚本美鈴長崎大学病院感染制御教育センター助教が、災害時に発生するさまざまな感染症について市民目線から講演。
「災害時の避難場所で発生しやすい感染症は、インフルエンザ、嘔吐下痢症、はしか、結核などで、細菌・ウイルスが人から人へと移ることが原因。接触、飛沫、空気感染のという三大感染原因を経路から防ぐことが肝要」と話し、日常からできる基本的な感染対策として、消毒薬や石けんを使った手洗い、マスクを徹底することを強調した。