「基本に忠実・変化に対応~よりよき皮膚科診療をめざして」
4月21、22日の両日、第28回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会が中央区渡辺通のホテルニューオータニで開催され、全国からおよそ1200人が集った。津田眞五会頭(津田皮膚科クリニック=大分市)は挨拶で、東日本大震災では1380万円の義援金を被害の大きかった地域に送ったと報告。2025年の介護と医療のあるべき姿を見据え、地域特性を活かした医療体制を構築していくため、将来の方向性を考えるべき時期だと強調、医療機能の分化と連携の中で皮膚科医療をどう発展させるかの提言や討論を望んだ。
市民講座で3医師が光老化や褥瘡を説明
22日にはスカラエスパシオ(中央区渡辺通)で市民公開講座「高齢者にみられる皮膚病」が開かれ、松田哲男(松田ひふ科医院)、桐生博愛(桐生皮膚科医院)の両医師を座長に3名の医師が講演、およそ100人の市民が参加した。
久留米大学医学部の古村南夫准教授は高齢者のスキンケアについて、高齢者の肌には、紫外線による光老化(=細胞が傷がつくことによる異常)が起きている。たとえば、メラニンが過剰にできたり、コラーゲンが障害・分解される異常などで、若いころ浴びた紫外線が、現在の皮膚の老化・病気が7~8割の原因。生理的老化と比べて光老化は、深いしわ、しみ、血管拡張、イボ、皮膚がんなどの原因となる。高齢者は皮脂が減少しているので、過剰な洗浄は乾燥肌の原因。1日おきに洗浄し、入浴後は保湿剤を使うべきなどと語った。
群馬大学の安部正敏医師は床ずれ(褥瘡)の知識と対処について話した。
人が同じ体勢で長期間寝たきりになると、体とそれに接する接触面に体重が垂直に加わって血行不良となり、その部分の皮膚が死に至るものを褥瘡といい、東日本大震災の被災者も、避難直後はダンボールの上に寝た人たちが多く、褥瘡が多数発生した。骨が突出した部分、臀部、踵、後頭部、背部にできやすいので、寝たきりの人は2時間に1度は体勢を変えるとよい。昔の治療は傷を乾かすことだったが現在は傷を湿らせて治している、などと説明した。
最後に国立感染症研究所・ハンセン病研究センターの石井則久医師が、ダニの病気(疥癬=かいせん)について講演した。
疥癬はヒゼンダニが人の皮膚に寄生しておこる皮膚の病。疥癬を疑う場合、怪しい皮膚の部分を削り、顕微鏡で卵・フンがないかを診断する。疥癬には通常疥癬と角化型疥癬があり、高齢者は角化型疥癬になりやすい。
飲み薬とクリーム剤を併用する治療法で、早くて1か月、遅くても2、3か月で治る。ただし感染症のため感染者全員の治療が必要で、感染源を明らかにすることが重要。
老人施設などで集団感染が発生した場合、入所者はもちろん、関係者全員にチェックを行うのでパニック状態になる。特に角化型疥癬の感染者を見落としてはならないと注意を喚起した。
参加者質問では、水虫(白癬)で困っている男性が、「治療で症状がよくなったので薬を飲むのをやめたが、また水虫ができないか不安」との質問には、自分の判断で薬を止めずに月一回程度は医院で診療を受けるべきとの回答があった。
最後に桐生博愛座長が、加齢による皮膚の変化は避けられないが、老人と言われないような健康的な生き方をめざしてほしいと述べ、講座を締めくくった。