北九州市で支援者向け研修会
北九州市総合保健福祉センターで3月26日、自殺対策支援者研修があった。医療や教育など、支援者向けに毎年行っており、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦精神科医が140人の参加者に「死にたいと言われた時の対応について」と題し講演した。
松本医師は、自殺直前には9割以上の人がうつなどの精神障害に罹患して正常な判断能力を失っており、一般の人が考えているよりも「覚悟の自殺」は少ないと語った。そのうえで「誰かから死にたいと打ち明けられたら、『死んではいけない』と頭ごなしの説教や叱責をするのではなく、訴えを誠実な態度で傾聴し、背景にある困難を同定することが大切」と述べて、単に「死なせないだけ」の支援ではなく、背景の「生きづらさ」を支援することが大切だと話した。リストカットなど軽症の自傷は「心の痛みを体の痛みに転化し、誰の助けも借りずに『死にたいくらい』つらい状況を『生き延びる』ために繰り返される方法」とした上で、「それはつらい現実に対する一時しのぎでしかなく、長期的にはつらい現実はますます過酷になり、自殺の危険を高めてしまう」と強調し、「自傷を繰り返す人の最大の問題はつらさを誰にも相談せず、一人で解決しようとする点にある。したがって、援助に際しては、自傷せざるを得ない背景に着目し、まずは援助関係を継続することが、命をつなぐ結果をもたらすはず」と強調した。
春日市から参加した61歳の元行政職員は「入退院を繰り返す知人が、リストカットをすれば気持ちがよくなると言ったが、そのメカニズムが理解できた。個人や機関が信頼されているから打ち明けてくれるとも聞いたので、今日の講演を参考にしてこれからも知人に寄り添いたい」と話していた。
(情報提供=北九州市立精神保健福祉センター▼猪原)