九州初の重粒子線がん治療施設
鹿児島から大阪へ向かう新幹線が停車したかと思うと、それとクロスするように長崎から博多へ向かう特急が滑り込んでくる。開業して1年ほどの「新鳥栖駅」には1日に250本を超える列車が停車するというから驚きだ。
そんな九州の高速交通の心臓部とも言える新鳥栖駅の目の前に「九州国際重粒子線がん治療センター=愛称サガハイマット」が姿を現した。今年10月には完成するというこの建物は躯体工事を終え、内装、外装の仕上げ工事が進んでいる。
建物のおよそ半分を占めるのが治療装置エリア。なかでも炭素イオンを治療に必要なエネルギーまで加速させ重粒子線を作り出す直径20㍍の加速器(シンクロトロン)がその中心で、平成25年春の開設を目指して装置(偏向電磁石)の据付作業も着々と進んでいる。
重粒子線治療の優れている点は、X線治療に比べて周辺の正常細胞にダメージを与えず、がん病巣だけを狙ってピンポイントで破壊すること。治療効果が大きいためX線や陽子線を使った治療に比べて半分ほどの照射回数でよく、1回の照射で治療が終わった例もあるという。
国内で4か所目、九州では初となる重粒子線がん治療施設の誕生で、九州のがん患者の治療の選択の幅が広がり、一人でも多くのがん患者の命が救われることを期待し、今後も注目したい。