分子標的薬との併用で強大な効果
人の血液から採り出した免疫細胞(NK細胞)を活性化しながら増殖させてがんを治療する「がん免疫細胞療法」について学ぶセミナーが、2月19日に北九州市と福岡市の2会場で開かれ、合わせて160人が参加した=写真。主催したのはリンパ球バンク㈱(本社=東京)。
1975年、どんながん細胞でも遭遇したら直ちに狙い撃つ最強の免疫細胞が発見され、NK細胞と名付けられた。
80年代に米国の国立衛生研究所が実施したNK細胞を用いる免疫細胞療法の大規模臨床試験により顕著な効果が確認されたが、NK細胞を活性化させながら増殖させることが困難とされていた。
93年に京都大学の研究者がNK細胞の活性を高めながら培養することに成功しANK(Amplified Natural Killer)免疫細胞療法と名づけられた。その後京都大学で臨床を重ね、2001年にがん患者を中心にして、培養センターなどを提供するリンパ球バンク㈱が設立され、同療法を実施する東洞院クリニックが京都に開院、現在は全国各地の医療機関と連携が進んでいる。治療実績は2011年12月末でおよそ1千350人。
NK細胞はもともと体の中にあり、正常細胞は傷つけずに、がん細胞がどんなに変化してもだまされずに1個ずつつぶしていくのが特徴。強い免疫刺激のため40度近い発熱をともない、費用は自由診療のため1クールで400万円程度かかる。
セミナーで、リンパ球バンク㈱の藤井真則社長は「分子標的薬との併用がベストですが、標準治療でがん細胞の総数を減らした後にANK療法でとどめをさし治療効率を高めることもできる。九州でも、ひわき医院(北九州市戸畑区)や喜多村クリニック(大野城市)など7カ所の医療機関と提携している。くわしい説明はフリーダイヤル0120・51・2251まで問い合わせてほしい」と語り、患者の面談からリンパ球採取(または採血)、NK細胞培養、点滴までの流れを説明した。
さらに三菱商事時代に抗がん剤の開発業務にも携わっていたことにも触れ、「欧米で抗がん剤といえば分子標的薬、それも多くはNK細胞を呼び寄せるADCC活性をもつもの。がん細胞を狙い撃つのはNK細胞だけだから」と世界の実情についても語った。
セミナーの後半には、ひわき医院の樋脇一久院長が、同院の取組み状況について話した。