「猫の本棚」 木村衣有子 著
18歳から26歳までを京都で過ごした著者。この本は彼女自身が相当の猫好きということもあり、猫のお話を様々な視点で読み解き書き記している。
夏目漱石の「吾輩君」、大島弓子の雨のなか拾ってくれた人間に恋をして、自分も人間になりたいと願う「チビ猫」、小沼丹の黒と白の猫。クロでもシロでもブチでもいいのに名前を付けず「黒と白の猫」と書かれている。他にも様々な猫文学が登場する。
著者自身が出会った「かまめしねこ」があとがきにかえて最後に書かれている。釜飯屋の前で出会った野良猫だからかまめしねこ。野良猫は自由に見えてそうではない。自分の居場所を日々探し、行き交う人から様々な名前で呼ばれている。そして別れを告げずに姿を消してしまう。
猫なで声で近寄って来たかと思えばサッと背を向ける猫。なかなか心を開いてくれない様に思えるのは私が可愛いと思う反面少しだけ怖れているからかもしれない。猫は言うなら恋愛上手ないい女、いい男。猫を手なずけるのは至難の業である。この本を読めば猫好きな人、犬好きなあなたも猫の気持ちが分かり猫との距離がぐっと近づくかも。動物好きな人に読んでもらいたい1冊です。
(紀伊國屋書店福岡本店 長谷美奈子)