【年頭に当たって】
平野隆三(九州医事新報顧問)
昨年2011年は国民皆保険制度が開始されて半世紀という節目の中で、TPPへの参加を表明した年であった。
身の毛もよだつ未曾有の大災害の復興から再生への対応のまずさや、今まで国から安全だと言われ続けていた原発が震災で破壊されて周辺地域も多大な被害を受け、電力不足は日本を縦断した。原発の見直しは世界の電力事情や産業を根底から変えようとしている。
今、海外の景気は低迷し、少子高齢化と国内市場の縮小が進む中で、円高が輸出を下押しする状況を作っている。
景気について企業の見方は「足踏み状態」と見ており、製造業などを中心とする財界トップたちは「TPP交渉に参加して、周辺国地域経済連携協定での出遅れを取り戻すことができれば、輸出交渉を高めることができる。それが日本経済を高め、復興需要による景気の下支えができる」と言い、また、国内の経済や財政は危機に直面している現状の打開策として、多くの問題を抱えたままで「社会保障と税の一体改革」という政策を立て、野党第一党と第二党の理解を得ようと与野党協議に入ろうとしているが、与党の党首がどう仕切るか、世界も国内財界トップが抱く期待が実現するか否かを注視している。
果たしてどう仕切られるかは先行き不透明であり、国政を担う与党内でさえ不協和音が生じている今、深刻な政治の機能不全状態から見ても「成立するのはむつかしい」との見方をしている。
【参加国協議に向けて】
米国の都合で言い出したTPPでも、日本政府はパートナーシップを保つためだったのか不明だが、簡単に参加を表明したのである。その言い訳が面白く、「イニシアチブを取るために参加する」と言っているが、他の参加国は「今の政治機能が不全状態ではTPP参加国に対して主導権を握ることさえできないだろう」と見ている。
過去に日本医師会や全農連など猛反発にあい、関税障壁で固めた国が、国民の理解を得ることなく参加表明し、指導力を試そうとしている。ほかの参加国は、すでに今の野党第一党の、与党を凌ぐ政策と力量(政権奪回)を見極めようとしている感がある。それも、成すすべもないまま参加を表明しているのだから。
成すすべがあると言うのであれば、それを国民に分かるように説明し、理解を得たのちに表明すべきではなかったのか。
なにも慌てることはないと言いたいのだ。曖昧模糊の状況のまま新年を迎えたのである。
新しい年を迎え、今年こそいい年でありたいと願うものである。
そんなことを考えていたら東京の知人から次のようなメールが届いたので披露しておく。
- 拝啓
- 今の国会討論を見ると、野党も含めて、党のためか集票が目的か、そのいずれであっても統一見解がなく質問内容はばらばらで、それへの回答もシナリオ通りのでき上がった回答書を棒読みするだけである。勉強会はしているらしいが、原稿なしの討論がほとんどない。
裏事情を覗くと、これはこれで実に面白く、質問担当議員が各党ごとに提出した質問を文書係が集約し、その質問内容を吟味して戦略を立てる。そしてその質問に対する回答書を関係省庁の中でまとめ、それを編集して持ち時間内に終えるように組み立てる。それを質問担当議員が読むのである。その際、議員の技量に応じて語調と身振り手振りを交えて攻める。 受け手は受け手で、のらりくらりとかわす。質問に詰まると関係省庁の関連資料の中から調べ、回答する議員のもとに黒子が走る。それを議員に伝え、回答している。
また、戦法の中で、時おりデータ資料を事前に用意したり、関連質問として予想外の質問を挟みながら攻めたりした時は、議長から注意を受けるといった具合。
当事者以外の議員は、ヤジる者、メモを取る者、隣りの議員とコソコソ話す者、居眠りする者、中座や欠席する者などさまざま。これが現実なのだ。これらのことを念頭に、もうじき始まる通常国会を見るのも面白いかも。私見としては実に不愉快で、政治のニュースを見ても少しも面白くなく、「貴重な時間と国民の血税を使って何をやっているのだ、もっと真面目にやれよ」と言いたくなる。