笑うことさえできれば大丈夫。あとは何とかなる
福岡がん患者団体ネットワーク「がん・バッテン・元気隊」代表 波多江伸子
福岡県には50団体を超えるがん患者会がありますが、長い間、横のつながりはなく「隣は何をする人ぞ」という状態でそれぞれが活動していました。患者会がまとまれば、行政や医療者の代表とも意見交換ができ、大きな企画も打つことができるのにと、二度の甲状腺がんで患者歴30年の私はネットワークづくりを思いついたのです。まず、「がん・バッテン・元気隊」という気楽な名前のがん患者どんたく隊を結成し、患者仲間や医療者や県の担当者も誘って博多どんたくパレードに参加しました。100人の患者家族と支援者が集まり、「元気隊」がスタートしたのは3年前の5月のことです。「元気隊」は12の患者会代表者で運営されていますが、乳がんの女性が多いせいか、よくしゃべり、よく笑い、よく食べます。
がんは統計的にはありふれた病気です。でも、いざ自分や家族が「がん告知」を受けると、生命の危機に全身が緊張し身構えてしまいます。そんなときにこそ先輩や同輩患者のやさしい微笑みや軽い冗談が、こわばった気持や身体の緊張をほぐしてくれるのです。急にお腹も空いて、出されたお菓子を食べながら治療の話も弾みます。患者の笑顔は家族をホッとさせます。笑う余裕があると医療者とのコミュニケーションもうまくいくようです。『笑うことさえできれば大丈夫、あとは何とかなる』というのが、四半世紀、がん患者サポーターを続けてきた私の実感です。(作家・倫理学研究者)