「想い」(2)

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忘れてはいけないこと

佐賀県神埼市の九年庵

佐賀県神埼市の九年庵(筆者撮影)

私はテレビを観る時間があまりない。ニュースは新聞とネットで知ることが多いが、映像を見ないとリアリティが感じられない。テレビの良さは、文字や写真とは違ったものが伝わってくることだ。特にスポーツは、ネットや新聞だけではまったく物足りない。

今年の日本シリーズは僅差の好ゲームが続き、監督の采配と選手たちの集中したプレイが日本シリーズの醍醐味を存分に感じさせた。11月20日の第7戦を、私は8回からテレビで観た。結果はご存じの通り3―0でホークスの優勝である。

胴上げのあと、恒例の優勝監督インタビューがあった。秋山監督の第一声は「正直いって疲れました」だった。意外な一言に正直な人だと思った。それほど勝負というものは優勝しても疲れるのだろう。最後にインタビュアーが、アジアシリーズについて聞いた時、監督はこう切り出した。

「その前にですね、3月11日の悲しい震災のあとに今シーズンはスタートしましたが、我われプロ野球にできることは、震災にあった方々に勇気を与えるということで、12球団が一丸となってやってきました」。

勝負師として極限の状況で戦い、優勝の歓喜の中で被災者のことを語り、プロ野球の存在の意味をしっかり話すことに私は感動した。

震災後、プロ野球は開幕をいつにするかで、セパ両リーグ、オーナーと選手会でもめた。被災者でもプロ野球人でもない私たちはいつの間にかそのことを忘れたが、秋山監督はそれを一番に語った。だが放映していた民放はインタビューの途中で放映を打ち切った。

後日友人から、BS放送は最後まで流していたと聞いた。なによりも採算重視の民放の本音を感じたのは私だけだろうか。

11月27日のNHKスペシャルで、原子力の安全神話を創り出した専門家や官僚などがテレビ取材に答える形で、安全神話がどう創られていったかを解明する番組があった。当事者たちが顔と名前を出して、安全神話が形成された経緯を語った勇気には敬意を表したい。しかし誰からも謝罪や悔恨の言葉はなかったように思う。第三者として事実を淡々と語っていただけのように見えた。

私はアッシュが1955年に行った同調行動の実験を思い浮かべた。まわりの人の行動や言動で、自分の判断が歪められることを実証した古典的実験である(「はじめて出会う心理学」有斐閣アルマ刊参照)。

周囲の専門家が「原子力は安全だ」という論拠を並べて行く中で、「危ないという論拠」を主張することは難しかったのだろう。最後は確率論で押し切られたという。それが福島の今、日本の今を生み出している。

科学的に真理を追究していくことが使命である科学者でさえ同調していくこともあること、たとえそれが真実あっても、自らの論拠だけで主張していくことで組織から追い出されていくと伝えられた。そこには、信念・哲学・そして覚悟が必要なのだろう。

事実はマスコミの伝え方によって受け止め方が違ってくる。いろいろな角度から真実を伝えていく番組があることが必要であり、その中から、何が正しくて何が間違っているのか、専門家に頼らずに、素人は素人なりに主体的に考えていくことが必要なのだろう。同調・熱狂や専門家幻想は、社会を危ない方向に、うねりとなって連れて行くからである。

仕事の合間に、佐賀の九年庵と八幡の河内藤園に紅葉を観に行った。彩り鮮やかな紅葉で、心が洗われる思いであった。双方とも人間が手を入れた「自然」ではあるが、紅葉の美しさは木々と周りの自然環境が生み出したものである。激動する社会に流されている時に、立ち止まること、自然の美しさに触れることも必要であると感じさせる、心に染みる紅葉であった。

(臨床心理士/坂梨 圭)


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