ジャーナリストの鳥越さん、医療制度と老いを語る
千人収容の会場ぎっしり、立ち見も
第64回九州精神神経学会(内村直尚会長=久留米大医学部教授)と第57回九州精神保健学会(冨松愈会長=福岡県精神科病院協会会長)が10月15日と16日、福岡国際会議場で開かれ、両学会あわせて1850人の参加があった。
今学会は精神医療や地域における精神保健福祉の分野で果たすべき役割が今後大きくなるとしてチーム医療の重要性に焦点をあてた。またジャーナリストの鳥越俊太郎氏が、みずからの闘病生活もおりまぜて、医療制度や老いについて講演した。
鳥越氏は1時間の講演中、舞台をゆっくり歩きながら話し、とても71歳にはみえなかった。講演の大要は次のとおり。
―今日みたいに若い人の多い場所に立つのは久しぶり。たいていは時間のあるお年寄りの前で話すことが多い。
自分は久留米の出身。久留米大附設高校から京大文学部に進み、毎日新聞(1965)に入社、サンデー毎日の編集長になった(1988)。
報道番組のキャスターは、筑後なまりが強いので一度は辞退したが、これからは訛りも味だと乗せられた。
人の前で話すのは苦手ではないが、父は精神的に弱い人で、こっそり酒を飲まなければ人と話しができなかった。私が生まれた時、母は出産で入院、父は精神の病気で入院していた。それもあるのか私は片耳に耳鳴りがあって、まわりが静かな夜はザーザーと雨降りのような音が聞こえ、寝られないので睡眠導入剤をずっと飲んでいる。最近の睡眠導入剤は昔と違って副作用がほとんどなく、どれだけ大量に飲んでも自殺はできない。
報道の立場から見て、最近は痛ましい事件が多いが、自分は医療報道を手がけたこともあり、凶悪犯といわれる人が実は精神病的である場合が少なくない。しかしマスコミはそれをほとんど無視する。
日本はとても暮らしやすい国。のどが渇けば自動販売機はそこらにある。米国は世界一豊かな国のように思われているが、日本のような保険制度がないので、貧しい人は医者にかかれず、倒れるまで薬局の薬を飲み続ける。倒れたら救急車が病院に運んでくれて、応急処置だけはしてもらえる。クリントンとヒラリーさんが保険制度を導入しようとしたが、共和党が大反対して実現しなかった。
私は4回がんの手術をした。保険制度はあっても抗がん剤治療は安くはなかった。症状が悪化しないことを医師はよろこんだが、私は漢方薬も飲んでいたから、それもあるかも知れない。今は筋肉トレーニングに励んでいる。
日本のお年寄りはとても元気で技術もある。これからは海外協力隊として活躍してもらうビジネスが生まれてくるのではないかと思う。―
大分県から参加した40代の女性看護師は、「仕事で必要だと思い学会に入っている。鳥越さんの話を聞いてから帰ろうと思った。とても素敵な人だった」と話していた。