大黒流の当番長は歯科医の三善康宏さん
山のぼせを探せ
「山のぼせのお医者さんを取材してくれ」。
博多山笠マップを広げて編集長が言った。この地図は、博多駅前の飾り山に詰めていた商店街連合会の人から編集長がもらってきたものだ。
「昇き山の絵がある場所に行けば見つかる」と彼は言う。それなら自分でやればいいじゃないですかと言う言葉を私は飲み込んだ。彼も挑戦したのだ。東流の長老から医者を紹介してもらい、医院をたずねて名刺を渡した。しかしおそらく、取材の趣旨説明の箇所で間違った。
「山にのぼせて仕事が手につかないお医者さんを取材したい」。受けてくれるわけがないだろう...
編集長はそこで折れてしまい、お鉢がこっちに回ってきた。
探すなら中洲
まず博多駅の総合案内で同じ同じマップをもらい、それを頼りに地下鉄で中洲川端まで行き、博多リバレインの裏道を通ってホテルオークラのスタッフに聞き、大黒流の詰所にたどり着いた。
中洲を選んだのは個人的な趣味から。ここらには軍歌酒場「アンカー」があり、内心「泣かすのママ」と呼んでいた占いのおばさん(今は博多区比恵町で居酒屋の女将におさまっている)が、かつて闊歩していたこともあり、自然に足が向いたというわけだ。
大黒流で赤手拭の人におそるおそる尋ねたところ、すぐに見つかった。しかも「三人いるよ」。
実はそれよりも前に、節ちゃんラーメンの店員さんに相談したら、すぐにあちこち連絡してくれて、千代流にはいそうにないこと、土居流に整形外科医院の先生がいることなども分かっていた。
詰め込み姿の三善歯科医
赤手拭の人はすぐに、目的のお医者さんを連れてきてくれた。その方が三善歯科医院の三善康宏院長。早速写真を撮らせていただいて、話を聞くことに。まずは取材の趣旨説明。これは編集長の言葉をそのまま使わせてもらった。それについて三善院長は「診療そっちのけで山笠に熱中してるなんて書かれたら、患者さんに怒られちゃいますよ」と苦笑いしながら、今年初めて務める当番長に責任を感じているとか、先輩と後輩の信頼関係で山が動く力が形成されるとかの話をされた。そしてまた、一人が頑張っても周囲の力がなければ物事がうまくうまく回らないことは診療所の経営も同じで、院長一人が努力しても周囲のスタッフが動かなければ、よい診療を患者に提供できる機会につながらないとも言われた。すごく笑顔のステキな先生で、そのことを伝えると、「怒って周囲に接しても、何のプラスにもなりません。日々笑って、明るい気持ちで患者さんやスタッフに接しています」とのこと。「リラックスの姿勢が大切」と繰り返し言われたのが印象に残った。
取材を終えて、赤と白の手拭を首から下げられた方に挨拶をして帰社し、翌日編集長三善院長の写真を見せて状況を話したら、次のように言われた。「三人が一緒に酒を飲んでいる写真は撮れなかったのか?」
私は心の中で言った。
「あんたがやれば?」
- 【三善歯科医院】
- 博多区下川端町10-12
電話:092-262-2670
診察時間は月~土までの午前9時から午後1時までと、午後2時から同6時半まで(1時~2時までは昼休み)。
車椅子での診療可。手話対応可。英語可。