奇縁に導かれてカンボジアから日本へ

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再生不良性貧血を克服したコン・ワッタイさん

カンボジア人のワッタイさん(31)が日本人男性と結婚したのは四年半前。飯塚市に暮らし、この七月に永住ビザを取得した。日本に憧れていたわけでもない彼女に、来日に至る経過を振り返ってもらった。

カンボジア人のワッタイさん(31)が日本人男性と結婚したのは四年半前。飯塚市に暮らし、この七月に永住ビザを取得した。日本に憧れていたわけでもない彼女に、来日に至る経過を振り返ってもらった。

出身はアンコールワット遺跡群のあるシェムリアップ州。祖祖父は高校の校長、祖父は大学総長、祖母は王宮の専属料理人で、叔父も大学教授を勤めるなど知識階級の血を引く。しかし知識人を一掃するポルポトの動乱により、一族は惨殺あるいは行方知れずに。残されたワッタイさんの母は名前を変えて身分を隠し、農家出身の男性と結婚することで生き残り、三人の娘を出産した。その長女がワッタイさん。没落した母は娘に、教育を授けた。

地元の高校を卒業後、友達に誘われて日本語学校のテストを受け、十倍の競争を勝ち抜く。父母は看護婦か教師になることを望んだが「それが大切なら、自分がやればいい」と突っぱねた。そのころから気は強かった。

日本語学校修学中に腹部に痛みを感じ、その治療ミスで、出血の止まらない再生不良性貧血を発症、急きょ飛行機で首都プノンペンの病院に搬送されたが、彼女を診た医師は言った。 「カンボジアでは治療できない。隣の国に行きなさい」

隣国ベトナムの病院でワッタイさんは死を覚悟した。「ベッドの上で体が動かず、涙ばかり出ました」。偶然そこに、癌の検診で病院を訪れたカンボジアの女性国会議員が現れ、「あなたにはやるべきことがある。死んではいけない」と枕元で励ました。それと前後して訪れたカンボジアの大臣も彼女の境遇を知り、治療費を全額払ったという。それをきっかけにワッタイさんは病気と闘おうと決め、以降、カンボジアとベトナムの病院を月に一度往復する生活が続いた。「顔が二倍に腫れ、足の太さは半分になりました。友達は泣くし、じろじろ見られて恥ずかしかった」と当時を思い出す。

病状は徐々にだが快方に向かい、ツアー会社や五つ星ホテルで働きながら治療は続いた。そして医師から次のように助言された。「ここから先は、日本かアメリカに行った方がいい」。

ワッタイさんにそのすべはなかったが運が味方した。カンボジアを訪れた札幌大学の女子学生がカルテを持ち帰り、医学部教授からていねいなアドバイスをもらったり、彼女を日本大使館に連れて行ったり、免疫力を高めようと毎日笑わせる日本人がいたり、来日したら遊びにおいでと住所を書き残す日本人が次々に現れた。そういった状況の中でワッタイさんは日本人男性と婚約する。

結婚直前に彼女を診たベトナムの医師は検査数値を見て言った。「もう、ここに来なくていい。ほとんど回復している。心配なら三年後にでも」。その声がすごく遠くに聞こえたそうである。

「飛行機の窓から初めて見る福岡は、海も山もとてもきれいで、これから日本で暮らすことが不思議に思えました」。

ただちに西原内科・消化器系クリニック(飯塚市)で検査を受け、西原秀一郎院長から「数値はどれも健康の範囲内。心配しなくていいですよ」と説明された。

今ワッタイさんはさかえ屋で働いている。「仕事は楽じゃないけど、いい人の多い職場」と言う。休日にはピアノを習い、友人と天神や博多阪急にも行く。

来日当初は他の医療施設で診療を拒否され、美容院に入店を断られることもあったが、今はそれを笑って許せる。「たぶんパニックになっているだけ。でも外国人の目には差別に映る」と分析する。

「遠くにいる時は笑顔、それを信じて近づいたら背を向ける。そんな二つの顔を持つ日本人は多いですね」。

しかし日本の医療制度はすばらしい。病院は清潔で看護師やスタッフはていねい、医師は分かりやすく説明してくれる。「医療保険制度のないカンボジアでは、何をするにもお金が必要。貧しい人は死ぬしかないです」。今楽しいのはインターネットのmixiやフェイスブックでたくさんの人とつながること。メイクアップアーティストになれたらカンボジアの友人は喜ぶだろうとほのかな夢もある。

カンボジアの女性国会議員の「あなたにはやるべきことがある」についてはこう答えた。

「本当に大切なことは向こうからやって来る。それを静かに待てばいい」。

【記者の目】
日本語は堪能。雪と桜が好きで、もつ鍋もたこ焼きも巨峰も好物。日本での生活が合っているようだ。彼女に親しみを感じるのは仏教徒だからか。日本に来ていちばん驚いたのは、やはり東北沖大地震。母国でテレビニュースを見た母親からの電話でそれを知った。母親は、家屋や車が津波で流される中を娘が逃げまどっていると思ったらしい。

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