原点は「済生」。それは生命を救う心です。

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社会福祉法人恩賜財団済生会支部
福岡県済生会福岡総合病院院長 全国済生会病院長会会長 岡留健一郎氏に聞く。
社会福祉法人恩賜財団済生会100年の歩みと、これからの展望。

── このたび済生会も100周年ということですが、あらためて理念や役割の骨子をお聞かせください

岡留健一郎 院長

岡留健一郎 院長

済生会の原点は、明治44年2月11日に明治天皇がおつくりになった「済生勅語」に凝縮されています。「恵まれない人々のために施薬救療し 済生の道を弘めるように」ということで、この時天皇のお手元にあった150万円を出していただきました。そこで時の総理大臣、桂太郎総理が全国の有志者から募って、当時は保険医療制度がありませんから、そういう救療所を何カ所かつくった、それが始まりですね。済生会ブランドの「済生」とは命を助けるという意味で、理念としてはまさにその一点に尽きます。

今回100周年を迎えるにあたっては、今年の5月30日、明治神宮会館で天皇皇后両陛下をお迎えしての記念式典が行われます。

全国に済生会は福祉施設を含めて全部で約367の施設がありますが、約5万人の職員の皆が柱とする理念は、以下3つに言及されます。

1つ目は、社会福祉法人である公的機関である私たちは、医療はもちろんのこと、生活困窮者など恵まれない方々のために医療福祉を提供していくことです。これは明治天皇の「済生勅語」の基本に戻ることでもあります。

平成23年5月済生会は創立100周年を迎えます

2つ目は、全国的に展開して医療福祉サービスを提供する、要するに地域の医療と密接に関わる立場で行うということです。

3つ目は、行政や関係閣僚と密に連絡を取り合い、サービスの質を向上させていくことです。つまり、すべては恵まれない方々のためにという理念なのです。また我々は全国の80病院を中心として、地域における医療関係の充実にも必死で駆け回っているというのが現状です。

── 特に、生活困窮者の方々の問題が深刻ですね。

平成22年の現状を見てみますと、本当に格差社会の中で保険証を持たない、あるいは医療を受けることができない方々が数多くいらっしゃいます。全国展開している私ども社会福祉法人が、何とかしないといけないということで、22年から3年計画で「済生会生活困窮者支援事業なでしこプラン2010」を制定しました。生活困窮者やホームレスに対する巡回、健康診断、ホームレスの健康相談支援事業などを定期的に行っています。

ほかにも刑務所を出所された方が社会復帰するまでのつなぎを法務省とタイアップして提供するとか、そういう事業者と共に健康や福祉に関することをやっていくことが私どもの使命なので、今、早急に全国展開をすすめているところです。

── そういう意味では、済生会病院の取組みと、大学病院などとは若干相違点があるような気がします。

やはり昭和27年に社会福祉法人としての認可を得た公的医療機関として、私どもは民間の医療法人ができない役割を担っていかなければならないと思っています。特に、困窮者に対する無料低額診療事業、そういう方々を救う医療福祉サービスですね。ちょうど今年が100周年で、新たな基本計画ができたものですから、それに沿って今動いているということになります。

── 今後の推進事業についてお聞かせください。

地域医療に貢献するということはもちろんですが、社会福祉事業に対する貢献も、もっともっとやっていかなければと思います。昨年を振り返ると、地域医療に没頭しすぎるあまり、基本的な社会福祉という部分がおろそかになってしまっていたという反省が本部を含めてございました。私は院長会の会長もしておりますから、そういうことを含めて原点にかえって私どもがやらなければならないことを粛々とやっていこうじゃないかと院長会議のたびごとに確認しているところでございます。

特に地域医療は、地域の皆さんに信頼されるということが一番大事ですけれども、そういう方々のためにも済生会の存在を世間に周知徹底させていきたいです。それと来年6月、私どもは5000人もの参加者が集う日本病院学会を、県の病院協会市民公開シンポジウムとあわせて福岡で開催します。

── 具体的な取り組みを教えてください。

地域医療支援のひとつとして、平成21年1月からスタートした開放病床があります。約380床のうちの10床を開放し、地域の先生が患者さんをきちっと送ってきて、地域の先生と一緒に患者さんを診ていく。要するに、地域の医師会の先生に病院を開放し、そこを十分に活用してともに病院で患者さんを中心にした医療をしてくださいという、地域支援病院の非常に理想的な形をさします。これはこれからの病院診療にとっての大きなポイントだと思います。福岡でしたら、ほかには浜の町病院や九州中央病院などがあります。

災害時の医療支援についても課題が山積みです。一昨日、日本病院会の常任理事会に出席してきたのですが、今回の震災で東日本の三陸地方の病院100あまりが軒並み被害を受けています。幸い、岩手の災害拠点病院は、県立病院が21病院ありまして、岩手県立中央病院と岩手医大を中心にしたネットワークがあったので比較的動きやすかった。しかし、宮城や福島などは体制が整っておらず大変だったと聞きました。

済生会は全国で7ブロックあるのですが、今回の震災では山形済生病院が中心となって、そこからドクターを派遣したりして済生会全体の司令塔をやりました。被災地へは、現在済生会から234名のスタッフが派遣されています。

地域災害拠点病院というのは、災害が発生した時に通常の医療体制を被災者に対する適切な医療を確保することが困難になった場合、地域の要請によって傷病者の受け入れや医療チームの派遣、そういうことをしなさいと義務づけられている病院のことで、福岡にもかなりあります。

特に広域災害時は、災害拠点病院が非常に重要です。今回は津波が中心だったので、阪神淡路大震災の時に作られた災害派遣医療チーム(DMAT)が、200チームくらい行っていますけどほとんど機能しませんでした。地震などで外傷を受けた患者さんを助けるのが主な目的なのですが、実際に現場に行った医療チームの話を聞きますと、「とにかく外傷が見あたらなかった。患者さんの多くは精神的に打ちひしがれているか、持病の糖尿病や高血圧などが悪化しているケース。外傷よりも、溺死か軽傷の方が目立ちました」と。

今回の震災については、長期にわたる慢性期疾患、特に東北地方は高齢者が多いですから、そういう方々の精神的ケアを含めたケアが非常に大事になってくると思います。その災害の内容によって特徴がありますので、そのつど臨機応変に動けるようなシステムづくりを国や都道府県を含めて作っていかざるをえないでしょう。しかも東北地方は、もともと医師が不足がちな地域。これからはもっと災害拠点病院が大事になりますし、国や地方公共団体も協力していかないといけない、切実な地元の方々の願いだと思います。

もっといえば、被災地に医師と看護師だけ行っても迅速な手助けは難しいわけです。派遣チームの中に調整委員という事務方が1~2名いて、地域の行政との連絡をとったり、トイレの問題など医師や看護師ではできないところをやったりする人の存在が非常に大事です。

── 今後の抱負をお聞かせください。

上空より見た済生会病院の全景

上空より見た済生会病院の全景

院長になって14年目になりますけども、今後は私どもの病院の理念であります地域の皆さまと先生方に信頼される病院を目指そうということはもちろん、地域医療をより密なものにして病診病病連携を完璧なものにしていきたいと考えています。

もうひとつは、ホームレスの巡回健康相談というような社会福祉事業への投資、事業拡大。それと予防的な部分からの健診事業も活性化していきたいです。診断治療につきましては、健診部門である健診センターを充実させたい。天神はスペースがなくて頭がいたいのですが、できる限り充実させたいですね。

電子カルテも、5月5日から稼働します。今、全職員が必死になって猛特訓中です。うちの病院の特徴といいますと、脳卒中や循環器疾患、がんなどの高度専門医療、それから救急車が年間4000台ほど来ます救急医療、この2本立てなんです。そこに地域医療の体制を加え、盤石なものにしていきたいですね。また福岡県にある全部で13カ所の地域がん診療連携拠点病院のひとつとして、がん患者さんの登録を含めた治療、フォローまでを責任を持って行っています。

それと、急性心筋梗塞の患者さんが多いため、循環器内科がものすごく頑張ってくれていたのですが、今回、福岡大学の田代教授のご協力を得て心臓外科の機能を作りました。ゆくゆくは「天神循環器センター(仮)」設置も視野に入れています。

将来的には、がんでしたら消化器病センターというように、科による縦割りの構図ではなく、循環器、消化器、呼吸器などの機能的なセンター構想化が理想です。患者さんにわかりやすくするためにも、私は外科で、あなたは内科とかいうことではなく、各臓器におけるセンターが一丸となって診る、近い将来にはそこを狙っております。

── 全国済生会病院長会の会長としての役割をどうお考えですか。

福祉施設の一部を除き、済生会の医療収益の根幹をなす病院は80カ所ほどあります。それらの横のつながりを密にして、ひとつの病院が突出するのではなく調和をはかりながら情報を皆で共有していきたいと考えます。

済生会全体の経営分析もできますし、経営不振に陥っている病院には経営指導にも行かせます。本部とタイアップしている経営指導員の方々のおかげで、少しずつ黒字に転換してきた病院も出てきているところです。自分たちが思っている以上に、ある情報を得たときに大きな気づきが生まれますので、皆で情報を共有しようというのが私の一番の役割だと思います。

── 最後に、岡留院長さまのご趣味は?

ノンフィクションの読書とゴルフのふたつです。たまの休日、古賀か和白のゴルフ場に行きますと、難しいコースでいやになりますけど闘志がわきますね(笑)


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