今月の1冊 - 8.「阪急電車」- - 九州医事新報毎月20日発行 -

有川 浩 著

ベストセラー作家有川浩氏の傑作連作集。映画化も決定した話題作。関西のローカル線を舞台に繰り広げられる片道わずか15分の胸キュン物語。

婚約者を会社の同僚にうばわれた結婚式帰りの美人OL、彼氏のDVに悩む女子大生、孫と散歩に出かけるちょっと気が強いおばあちゃん、図書館帰りの若い男女、学校帰りの女子高生、偶然乗り合わせた同じ大学の大学生...阪急電車を利用する一見普通な登場人物達それぞれの人生が少しずつ交差し、恋の始まり、別れの兆し、新しい出会いなどそれぞれの人生にとって重要な出来事へとつながっていく。決して特別ではない日常の一コマを切り取ったようなそれぞれのドラマに共感できる人も多いはず。

東日本大震災発生時も人々の助け合いや譲り合いといった心温まる話が話題になったのは記憶に新しい。大変な時だけでなく何の変哲もない日常の中でも人と人が関わり合う事の大切さが感じられる。目まぐるしく過ぎる日々の中で忘れがちな人としてのマナー、思いやりの気持ち、思わず心がほっとするような出来事を感じられる長いようで短い旅に様々な境遇の登場人物達とともに出発しよう。きっと自分のドラマが少しだけキラキラするような出会いが待っているはず。

九州新幹線開通により九州内はもちろん青森から鹿児島まで新幹線で移動できる様になった今だからこそ読んでほしい。