第45回 糖尿病学の進歩【レクチャー】

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糖尿病療養指導に必要な知識 日本糖尿病療養指導士の役割と展望
順天堂大学医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センター糖尿病・内分泌内科
小沼 富男 教授

順天堂大学医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センター糖尿病・内分泌内科 小沼 富男 教授

はじめにわが国の糖尿病患者の実態は、患者数約890万人、その予備軍は約1320万人で、特に近年は糖尿病合併症有病率が増加している。網膜症に至っては23.3%で成人の失明率の原因2位となっている。しかし受診者は糖尿病全人口の約半数でしかないというのが実態である。

その中でまず我々は何をおこなうべきか、糖尿病合併症の発症・進行予防や糖尿病の発症予防、糖尿病発見から治療開始までのケア、糖尿病治療中断の防止が挙げられる。これらの実現を困難にしているものが、糖尿病治療の処方は医師が行い実施は患者がおこなっていること、両者の距離が遠すぎること、糖尿病治療がより専門家・多様化していること、糖尿病専門医数が不足し医療連携が未熟になっている実態である。

ではまずそれらに対して取り組むべき対策として

  1. 糖尿病療養指導士の充実・拡大(糖尿病だけでなくその予備軍にも)
  2. チームアプローチの必要性・その確立。職種内の縦のつながりから職種間の横のつながり、拡がりに
  3. 医療連携の構築。施設内(施設完結型)の充実から、施設外(地域完結型)活動へ。

ここで糖尿病療養指導士の役割が非常に重要となる。

糖尿病指導士(Certified Diabetes Educator of Japan=CDEJ)とは、糖尿病患者数の急増に対して、その治療効率を高く維持するために適切な糖尿病療養指導が必要になる。その療養指導をおこなう際に、医療従事者は密接な連携を保ち、それぞれが専門性を生かしたチームアプローチを行うことが必要であり、そのために設けられた資格である。その認定を行っている、日本糖尿病療養指導士認定機構は日本糖尿病学会・日本病態栄養学会・および日本糖尿病教育・看護学会の3学会が協力して、2000年2月29日に設立した任意団体である。

認定機構には講習会委員会・認定委員会など6つの委員会と理事会があり役員・委員は国内の糖尿病権威者140名が参加している。委員会は年会50回以上開催され、CDEJの地位向上のために尽力している。主な活動は講習会の開催・認定試験の実施・ガイドブックの発行・認定の交付・認定試験の更新・広報活動などがあり、糖尿病療養指導士の地位向上のための活動を行っている。

認定試験の受験資格は医療職の資格を有していること(看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師・理学療法士のいずれか)、一定の条件を満たす医療施設で、継続2年以上糖尿病療養指導の業務に従事し、通算1000時間以上の療養指導経験があることが条件となる。一定の条件を満たす医療施設では日本糖尿病学会専門医あるいは常勤学会員医師が受験者へ指導をおこなっている。そのためCDEJとは資格取得が目的ではなく認定後の伸びが最も期待され、専門医が最も信頼できるメンバーとなるため、その真価を問われるのは資格取得後の活動にあると言える。

現在CDEJの数は、更新者も含めて約1600名である。平成23年度の予算概算要求項目に糖尿病療養指導士が記載されたこともあり今後さらに増えていくことが期待される。しかし認定には5年間の期間があり更新率は約60%となっている。更新が困難な理由として1群単位の取得が困難であること、講習会を受けに行く時間や費用の問題、社会的認知度が不足しているという課題がある。その対策として単位の取得に関しては生涯教育単位での代替えや地域で講習会を多く開催するといった取り組みを行っている。

今後の認定機構の方向性について、現状は更新後のCDEJは求める到達点に個人差が大きく、機構主催の更新者講習会も見直しを迫られている。そこでe-ランニングを導入し、CDEJシニアコース講習会の構築を検討中である。実現すれば多彩な最新学術的情報を的確に供給できる。さらにCDEJシニアコース修了者の一部が当機構の講習会ファシリテーターに育てば地域での講習会がより細部にまで移行し、多くの人が受講しやすくなるという利点もある。

社会的地位向上、具体的には診療報酬加算をめざす活動としては、CDEJ活動と合併症の予防効果を示す成績の集積をおこなっているが、まずは機構と共に専門医やCDEJが一丸となって身近の医療従事者・行政・一般社会へ働きかけていくことが重要である。

CDEJに現在の状況を聞いてみると、患者への教科書的知識の提供、食事・服薬・運動の指導、インスリン自己注射手技の指導、血糖自己測定法の指導、低血糖やシックスデイ時の対応などを含めた日常生活全般にわたる相談、糖尿病学集会の企画や運営、さらに患者会のサポートなど多岐にわたって熱心に取り組んでいるのが伺える。またCDEJは日常の勤務に忙しい中、多くの研修会、講演会、学会等に参加して、新しい知識、技術、態度などの習得に励んでいる。これらのCDEJ活動の内容レベルは年々向上し、各自のモチベーションが高くなっているのも事実である。

今後の活動として期待されるのは、まずこれまで活動してきた各自の勤務機関内での「施設完結型」チームアプローチの更なる充実をはかることである。

例としてある施設ではCDEJの資格取得者が増加し、それぞれが定期的に会合して(施設内療養指導士会のようなものを立ち上げて)、糖尿内科以外の診療科の糖尿病療養指導士を成功に導いている。次に糖尿病患者が増え続けて、医師が足りない状況の中、枠組みを地域に広げた中で人的資源を活用しようという「地域完結型」チーム医療に目を転じて、早急にその対策を講じることが重要である。

すなわちCDEJが糖尿病の医療連携の中でどのような役割を果たせるかについて模索することが、いま困難な状況にある医療連携に灯りをともすことになる可能性がある。地域の各中核病院とその周辺のかかりつけ医とのネットワークをより密に、より拡大し、各単位間での連携の流れを構築していく必要があるだろう。

また行政が進める住民活動としての糖尿病一次予防(メタボ特定保健指導を含む)にどのように関われるか、さらにはその特定検診で発見された新規糖尿病例にどのように介入できるか、など有意義な活動の展開が期待される。

最後にわが国のCDEJの療養指導に対する公的保健給付の実現などを含めたその社会的地位の向上を目指すことが大切である。


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