第45回 糖尿病学の進歩【シンポジウム】

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糖尿病の診断基準とHbA1cの標準化 糖尿病の新しい診断基準
滋賀医科大学医学部付属病院 柏木 厚典 病院長

滋賀医科大学医学部付属病院 柏木 厚典 病院長

糖尿病の診断基準設定に至る経緯についてなぜHbA1c値が取り入れられたかというと、07年に日本糖尿病学会「糖尿病関連検査の標準化に関する委員会」で、HbA1c測定の国際標準化が検討された。09年9月には"HbA1c国際標準化に関するわが国の対応"として関数式:HbA1c(NGSP値)=1.019×HbA1c(JDS値)+0.3(%)を発表した。

一方同年の3月に門脇孝理事長が"WHO Consensus on the Definition Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus"に参加し糖尿病の診断基準としてHbA1c(NGSP値)6.5%以上を採用することが発表された。HbA1c値を診断標準に用いる利点として

  1. DCCTやUKPDSで用いられてHbA1c測定値の標準化が進んでいる
  2. 測定に絶食の必要がない
  3. 血清分離を行う必要がない
  4. 日差変動が少ない
  5. 急性のストレス・食事状態の影響が少ない
  6. 平均血糖値と直接相関する

という点が挙げられ、逆に欠点として

  1. 糖負荷試験を行わない場合、心血管イベントの高リスク群であるIGTの診断が出来ない
  2. 貧血肝硬変、大量出血など赤血球寿命の変動などにより正確な平均血糖値を反映しない。
  3. 急激な血糖の変動を伴う場合平均血糖値から外れる。劇症1型糖尿病では低値となる。
  4. HbA1c測定の精度の問題がある。Point of Care(POC)機器の一部は診断に用いられる精度に達していない

という点がある。さらに、現在世界的に使用されているHbA1c(NGSP値)とわが国のHbA1c(JDS値)の間には、HbA1c(NGSP値)=1.09x HbA1c(JDS値)+0.3%の関係が成立し、HbA1c(NGSP値)0.4~0.5 %高値である。測定誤差2~3%を考慮し、HbA1c(NGSP相当値)=HbA1c(国際標準値)=HbA1c(JDS値)+0.4%の式でNGSP相当値を計算し測定値の国際標準化に対応することとなった。糖尿病の疾患概念は旧診断基準と同じであり、インスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし、種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群という定義である。

慢性高血糖を示す病態をどのように診断するかということが診断のツールとなる。この概念をより正確に反映して、糖尿病やその高リスク者を適格に分類・診断できる新しい診断基準が求められている。

では、昨年7月に改定された糖尿病の新しい診断基準について、いくつかの観点から注意点をまとめ有効性と現在の課題を紹介する。

現行診断基準との継続性についてはこれまでの血糖による診断基準と併用して慢性高血糖状態をより良く反映する指標であるHbA1cを糖尿病診断基準の第一段階に取り入れ診断することで早期介入へと繋げることが目標である。そのエビデンスに基づいた科学的妥当性については、HbA1c値は空腹時血糖やOGTT2時間値の間に一定の直接相関関係がある。

また、HbA1cは糖尿病網膜症発症との間に一定の関係が認められるという根拠がある。伊藤千賀子先生のデータを中心として診断基準上空腹時血統値126mg/dl=2時間血糖値200mg/dl=HbA1c(JDS値)6.1%という数値が等価であり使用可能と考えられる。

海外との糖尿病診断基準との整合性ですが、IFCC法によるHbA1c国際標準化により、HbA1c値についてJDS値とNGSP値の相互換算が可能となった。この換算法ではJDS値はNGSP値(%)マイナス0.4%として表現される。またInternational Expert Committeeの見解でも糖尿病診断基準のHbA1cのカットオフ値はNGSP値で6.5%(JDS値では6.1%に相当する)である。ということからも我々のデータと整合性が認められる。

臨床現場での実行の可能性はHbA1cの測定方法と精度管理については十分な検証がなされており診断基準に用いることができる。JDS値をHbA1c(JDS値)として表記し、NGSP値をHbA1c(国際標準値)と表記する。当面両方を併記し、我が国のエビデンスに基づくHbA1cの診断・治療へ活用することで国際標準化にも対応する。HbA1c値を糖尿病診断に用いる際には次のことに注意しなければならない。

  1. HbA1cの反復では糖尿病の診断を確定してはいけない
  2. 赤血球の寿命短縮で低値になる場合がある
  3. POC機器には測定精度上の問題がある機器がある。
  4. 血糖値の基準で確認する。両者の同時測定が望ましい。

また、糖尿病の頻度推定を目的とする疫学調査などでは1回の検査だけによる「糖尿病型」の判定を「糖尿病」と読み替えてもよい。今後臨床研究・治験における糖尿病の診断は今回の改訂基準を用いることを推奨する。その成果を国内外の論文発表、臨床研究あるいは国際学会での発表の場合には、必ずHbA1c(NGSP相当値)を用い、それを明記する。国内学会では当面いずれを用いているかを明記することとする。

糖尿病の診断・治療・予防法の確立とわが国発のエビデンスの国際的発信を目指して、学術集会・地方会・刊行物などに加えてマスメディアなどを通して新しい診断基準の普及を図る。厚生労働省および関連学会と協力して、特定検診や一般検診(人間ドック)などにおいても、新しい診断基準に基づいた糖尿病のスクリーニングや予防がなされるよう努力する。臨床現場などにおいては当面(NGSP相当値=国際標準値)とHbA1c(JDS値)を併用するが、可及的速やかにHbA1c(国際標準値)に一本化して、国際的な情報の共有化ができる体制を整える必要がある。

境界型の取り扱いについて境界型は糖尿病発症の高危険群でADA、WHOで定義されたIFG、IGTに相当する。糖尿病発症の後期健軍であると共に、心血管イベント発症の高危険群でありこの中には食後高血糖・インスリンジェニックスインデックス、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームの合併症、一時的耐糖能悪化群、改善群など様々なものが含まれる。このような境界型の取り扱いは糖尿病発症進展の解明予防の上で非常に重要である。

最後にこれからはHbA1c国際標準化への移行が進められていく。完全に変更される日がいつになるのかはまだ定かではないが、これから新しいHbA1c(国際標準値)への全国一斉変更へ向け準備期間を設ける、広報活動を行うなどしてスムーズに移行できるよう努力してまいります。


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