第24回 日本軟骨代謝学会【シンポジウム1】

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軟骨形成におけるプロテオグリカン、グリコサミノグリカンの役割
四肢発生におけるヘパラン硫酸プリオグリカンの役割
九州大学整形外科 松本 嘉寛

九州大学整形外科 松本 嘉寛

遺伝性多発性外骨腫(Hereditary multiple exostosis:HME)は、骨幹端部に発生する多発性骨軟骨腫を特徴とする染色体優性の遺伝性疾患であります。この疾患は、しばしば四肢の変形や低身長をきたすことが知られていますが、遺伝子連鎖解析の結果、Exostosin1(EXT1)、Exostosin2(EXT2)がHMEの主たる原因遺伝子であること、そして、EXT1がヘパラン硫酸(Heparan sulfate:HS)の合成に必須な酵素であることが解りました。しかし、HSの欠損とHMEの数々の病態との因果関係については不明でありました。

今回は、EXT1が遺伝性多発性外骨症の原因遺伝子であること、またそれの四肢特異的遺伝子欠損マウスのフェノタイプ、そしてEXT1はヘパラン硫酸の合成酵素であり間葉凝集(Mesenchymal condensation:MC)にどのように働いているかということ、最後にそのEXT1やヘパラン硫酸がBMP(Bone Morphogenic Protein)のシグナル情報にどう関係しているかということについてご説明したいと思います。

まず、遺伝性多発外骨症はHMEと略させていただきますが、先にも述べましたように、骨幹端部に発生する多発性骨軟骨腫を特徴とする染色体優性の遺伝性疾患であり、EXT1が原因遺伝子です。EXT1は8番染色体に存在しEXT2というファミリー遺伝子に状態を形成します。発現はユビキタスなようです。

近年の報告でこのEXT1がヘパラン硫酸の合成に、必須のエンザイムであることがわかりました。ヘパラン硫酸は基本的にプロテオグリカンとして存在していて、代表的なものとしては、膜表面にあるシンデカン、グリピカン、また細胞外あるものとしてパールカン、アグリンが主体となっています。EXT1やEXT2はコアプロテインに対するヘパラン硫酸に付加を形成するのに必須であり、すなわちEXT1もしくはEXT2がないとヘパラン硫酸さを欠いた、ヘパラン硫酸プロテオグリカンが生体内で産生されるようです。

ヘパラン硫酸の受容性について、まず神経科学の分野で研究が進み、脳の発達やアクソンのガイダンスにヘパラン硫酸が必須であることがわかりました。しかしながら、HMEは骨格系の病気です。骨格系におけるヘパラン硫酸の役割には非常に興味深いものがあります。しかし、いわゆるコンベンショナルなEXT1の遺伝子変異マウスでは、早い時期で胎生致死となってしまいます。

そこで、今回EXT1を四肢のみで飛ばすシステムを構築しました。これまで、Prx-1を使い、四肢特異的にEXT1を欠損させるマウスを作りました。今後これを変異マウスと呼ばせてもらいます。まずEXT1の発現の確認ですが、E9.0の時期からすでに肢芽をもって発現を確認しています。

変異マウスではEXT1の線がほぼ乱れないこと、その結果、シンデカン3というヘパラン硫酸プロテオグリカンがコアタンパクだけの裸の分子になってしまうということを確認しました。四肢骨の短縮、横経の増大、関節形成不全、指欠損などの多岐にわたる四肢発生異常が起こりました。変異マウスのフェノタイプは、太くて短く、なおかつ関節の形成がおこっており、さらに指の変形もおこっているという非常に大きな異常をきたしております。HMEの患者さんにも基本的にはこの症状と似たフェノタイプがみられました。

四肢の発達については三段階に起こります。胎生9日あたりはパターンニングと呼ばれる地図ができる時期です。その後、その地図に従って間葉凝集が生じ、将来のテンプレート(鋳型)が形成されます。その鋳型に沿って骨格が形成されます。

まず、最初の段階・パターンニングについて検討しました。パターンニングの段階には、Shh, Ptc, FGF8の三つの因子がまず重要です。結論を申し上げますと、この発現はほとんど変異マウスではありませんでした。もう一つの重要なイベントとしてホックスコードといわれる脳の骨にどの部分の細胞まであるかという遺伝子の発現があります。このホックスコードも変異マウスではほとんど変化はありませんでした。

中間のイベントである間葉凝集はどうでしょうか。変異マウスでは胎生12.5日すでに、やや太くて短い肢芽のタイプを示します。14.5日は、アルシャンブル染色ですが、すでにテンプレート事態がおかしくなっていることが明らかになりました。この中間の時期での主なイベントは間葉凝集と、もう一つ重要なイベントは、この周りにペリコンドリウムという境界が形成されることです。

野生型の組織標本と比較して、変異マウスではこの間葉凝集の境界が不明瞭で範囲も広がってることが組織学的に証明されています。ハイブロネクチオンを用いてペリコンドリウムと思われる部位を染色してみると、野生型では薄いペリコンドリウムが形成されるのに比較して、変異マウスでは非常に厚くぼやけたペリコンドリウムの発現パターンを示しました。

次に、ペリコンドリムフォーメーションに対する、BMPの役割について解説します。BMPのアンタモニストのノックアウトマウスでは、BMPのシグナルは過剰になっております。その結果、このマウスの示す表現形は我々のEXT1の変異マウスと非常によく似た表現形を示しています。このことは、ヘパラン硫酸はBMP情報伝達に関与している可能性を示唆しています。BMPはTGF-βファミリーに存在します。そして、BMPはヘパラン硫酸に強く結合することが知られています。

そこで、さらに検討を進めるために、マイクロマスカルチャー法を用いました。これで、コンドロジェネシスがインビトロで検討することができます。モデュール一つずつを見ると中心部がハイパートロフィックコンドロサイト、辺縁部にペリコンドリアム、マリファス細胞(周囲の間質細胞)という生体内のメセンカバルコンデンセーションが模倣される状態となっております。野生型および変異マウスより、マイクロマスカルチャーを行ったところ、野生型では中心部にスマットの活性化、BMPシグナルの活性化が見られ、辺縁部にペリコンドリアムが見られ、きれいに分かれた構造をしめします。

しかし、変異マウスが作ったマイクロマスカルチャーでは、スマットの活性が非常に不均一でファイブロネクチンの配置もばらばら、良好なペリコンドリウムの形成が遅れているもしくは阻害されていることが示されました。これを生体内に戻ってさらに見ると野生型では、この肢芽の中心部にBMPが存在しています。

しかし、変異マウスではそのBMPの発現が非常に広範囲に広くわたっています。そして、その下流の活性化をスマットの活性化と認識する抗体で検討したところ、野生型では、非常に狭い範囲、決まった範囲でスマットの活性化がなされているのに比較して、変異マウスでは、広い範囲で薄いスマットの活性化が見られました。

以上をまとめますと、野生型マウスではBMPが膜表面にあると思われるヘパラン硫酸によってトラップされてBMPの濃度勾配がキープかつしっかりと分かれた状態であると思われます。しかし、変異マウスにおいてはヘパラン硫酸がないためにBMPの起伏はなだらかになってしまい、またBMPのシグナルの強度も若干おちるのではないかと推察されました。

研究結果の結論は、まず、EXT1の四肢特異的な変異マウスでは非常に強い、骨格形成異常を示しました。そして、この結果は実際の患者さんであるHMEの方のフェノタイプと非常によく似ておりました。これがクリニカルなプレバランスと思われます。その異常というは、細胞生物学的な考察で、間葉凝集の異常に主な原因があるようです。

最後にその異常というのは、分子生物学的な考察で、ヘパラン硫酸の欠損によるBMPの分布異常というものが最も大きな原因でないかと考えられました。よって、ヘパラン硫酸は、四肢発生時における正常なBMP経路活性化および間葉凝集形成に必須であることが示されると共に、ヘパラン硫酸の欠損はHMEの四肢変形の病因の一つとなっている可能性を示しました。

内容は九州大学整形外科とSanford-Burnham医学研究所の共同研究による。


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