堂場 瞬一 著
チーム 堂場瞬一著
【実業之日本社文庫 定価686円(税抜)】
今やお正月の風物詩となった「箱根駅伝」を舞台にしたスポーツ小説。10月の予選会で破れた大学の中から好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。予選敗退の傷を抱えながらもそれぞれの思いを胸に集ったメンバーは走る目的もモチベーションも実力も全く違う。そんな中、リーダーに指名された浦はなんとかチームを一つにしようと優勝を目標に掲げ、他の大学のメンバーとも積極的にコミュニケーションをとるが、一人だけずば抜けた才能を持つ山城には「チームなんて意味がない。俺は自分のために走る」と一蹴される。そんな山城の態度にチームの雰囲気もいまいち盛り上がらない。
究極のチームスポーツと言われる箱根駅伝を敗者の寄せ集めである彼らが学連選抜で走ることに何の意味があるのか、なんのために襷をつなぐのか葛藤しながらも迎えた本番。彼らには良くも悪くも数々の試練が襲いかかる。果たして彼らはどんな襷をつなぎ、どんなゴールにたどりつくのか――。
スポーツに限らず仕事上でも人間関係の中にも求められる"チーム力"。急遽集められ、バラバラだった彼らが箱根駅伝という大きな舞台に挑む姿を通して終始本当のチームとは何なのか、を語りかけている本作。無縁社会とも呼ばれる現代において、人と人が本当の意味で支え合い、つながりあうことの尊さと大切さをスポーツという視点から描いたスポーツ小説の金字塔だ。