おおやこどもクリニック ―― インタビュー
福岡市早良区で福岡県初となる小児リハビリ療育併設クリニックを開業しているおおやこどもクリニックの院長と副院長に小児リハビリを始めたきっかけから小児リハビリの役割、これからの展望について伺った。
- ◆おおやこどもクリニック
- 〒814-0031福岡市早良区南庄3-6-30
TEL:092-834-5608
http://www.oya-clinic.jp/
―― 小児リハビリ施設を持つクリニックを開業しようと思ったきっかけを教えてください
【大屋和之 院長】
九州大学医学部卒業 日本小児科学会小児科専門医、久山療育園重症児者医療療育センター勤務を経て2010年5月おおやこどもクリニックを開院
【大屋美紀 副院長】
日本リハビリテーション医学会認定医・麻酔科標榜医・日本東洋医学会所属、九州大学麻酔科蘇生科研修登録医(ペインクリニック研修中)
【院長】開業する以前は障害児施設で働いておりましたが、遠方から何時間もかけて通われる患者さんが多かったんです。その方たちから「地元にかかりつけ医がいたらいいのに」という要望を聞き、少しでも患者さんに身近に感じてもらえる地元のかかりつけ病院が作れたらという思いで立ち上げました。
小児リハビリ施設を併設する医院というのは福岡にはありませんでしたので先の見通しが立てにくく、開業までの準備は苦労しました。相談内容も、障害やリハビリについてのものが多いと予想していたのですが、基礎疾患や精神発達、コミュニケーションに関するものが多くありました。
患者さんひとりひとりが持っている障害が違いますし、また親御さんの希望もそれぞれ違ってきますのでしっかり向き合って話し合いながら診療を行うことを大事に考えています。
―― 小児リハビリと大人のリハビリの違いについて教えてください
【院長】大人のリハビリはRe(再び)という意味があり、訓練によってもう一度動ける様に、元に戻る様にという意味があります。しかし子供の場合は、まだ経験していないことをいちから教える、今から習得していくという点で違いがあります。さらに、本人だけではなく、家族のサポートや生活環境まで生活全体を診なければならないという点でも違いがあると考えています。それをしっかり診療できるように当院では小児科医・リハビリ医・理学療法士・保育士などの専門スタッフが力を合わせてチームで診察や訓練をおこなっています。
【副院長】チームでの連携というのは本当に大切にしていて、病院内のスタッフだけでなく、お母さんやお父さん、地域の幼稚園や小学校も含めて一緒にと考えています。例えば、子どもさんの治療をしていても、お母さんが不安になっていたり、なにか出来ないことに対して過敏になっていると、それが知らない間に子どものストレスになっていることもあるんです。
お母さんともよく話し合って、安心させてあげることで、子どもも安心して訓練を受けることができるようになります。ひとりひとりの病状は違うので、家族のニーズに合わせた治療をチームみんなで考えながらおこなっていくということが重要だと考えています。そのためにリハビリ診療は予約制にして、悩みや希望を話し合う時間を多く設けているんです。
「先生が忙しそうだから」と悩みを言い出せない患者さんも多いと思いますので、敷居を低くして患者さんが自分の意見を言いやすい雰囲気作りをおこなっています。
【院長】話しやすい環境づくりの一環として院内の待合室や診察室を大人ブースと子どもブースに分けています。また、子どものリハビリ室は扉の窓をマジックミラーにしており、部屋の外から中にいる子どもの様子を見守れる様に工夫しています。そうすることで、子どもものびのび訓練を行えますし、お父さん、お母さんもその様子を安心して見守ることが出来ます。
―― 今後の展開や課題を教えてください。
【院長】今後は作業療法士や言語聴覚士にも参加してもらい、さらに専門的な医療を行えるチームを確実なものにしていきたいと思っております。さらに地域との連携、疾患によっては他の専門医との連携も必要になってきますので、その点でもより確実なものにしていきたいと考えています。
障害だけを診るのではなく、家庭生活、保育園・幼稚園就学など社会生活を含めた全体を視野にいれながら治療していくことを目標にしています。
課題としては、他の地域にもやはりかかりつけ医として小児リハビリの病院が増えていって欲しいと願っているので、この病院がいいモデルになっていく様に努力していきたいと思います。
【副院長】いかに患者さんの障害を理解するかというのが重要となってくると思うので、医者の目線だけでなく、母親目線も大切にしながら診療・育児支援ができればと考えています。まずは些細なことでも相談に来てほしいと思います。