傷つきやすい皮膚のスキンケア「在宅でのスキンケア」
有限会社エルム 今丸 満美 社長
近年日本では劇的に高齢化が進んでいますが、私が泌尿器科に勤めていた頃は失禁について相談されても「歳だから仕方ない」と答えることしか出来ませんでした。専門の先生に聞いても、同じ答えでした。
高齢化が進み長生きできる時代に突入したのに、失禁が原因で家に閉じこもり、消極的になってしまうことが本当に幸せなのだろうかと考えたときにこれではいけないと思い、尿失禁をはじめ排泄障害ケアの勉強を始めました。排泄は日常生活に絶対欠かせないものですから病気や症状だけでなく、生活にも興味を持たなければいけないと思い、在宅ケアの勉強を始めました。その経験から在宅でのスキンケアについてお話させていただきます。
排泄とスキンケアというのはやはり密接な関係があります。皮膚は弱酸性ですが、排泄物はアルカリ性ですので、触れている時間が長くなるほどトラブルが起きてしまいます。皮膚に排泄物が接触するときというのは、パッドやおむつ、ガーゼなどを使用したときが考えられます。
では、できるだけ接触させない為にはどのようにしたらよいのでしょうか。現在は医学が進歩しています。症状の相談をされたときに「歳だから仕方ない」といっていた時代とは違い、治療ができるようになりました。
尿失禁は訓練・内服・手術などの治療法があります。便失禁も食事調整・内服薬・手術などで排泄コントロールができます。これにより、症状が解消できればパッドやオムツを使用する必要もありませんので、スキントラブルもある程度防ぐことが出来ます。そのためにもまずは専門職へ相談していただきたいと思います。
それでも改善されない場合の対処法としましては、パッドやおむつを頻繁に交換するということも効果的です。ただし、病院や施設では人員の問題もあり、頻繁に交換できない場合もあると思います。そのときにはパッドとおむつの間に皮膜をつくる製品などを有効に利用していただければと思います。また、交換時にはリムーバーを使うなどして優しく丁寧に剥離し、石鹸などを使って洗浄することも重要です。その際には、保湿・撥水を兼ねている軟膏で保護するとさらに効果が増すと思います。
事例を交えてスキンケアについて紹介します。80歳代後半の女性は、入浴時など衣服を脱ぐときに全身の皮膚から白い粉が舞うような状態でした。肌が乾燥しており、かゆみが強く掻き傷もありました。皮膚科から処方された軟膏を塗っていたのですが、変化がみられませんでした。そこで試しに弊社でも使用しているセキューラPOという製品を使用したところ、翌日の入浴時には粉が舞いませんでした。ご本人もかゆみを訴えなかったことから、ご家族と相談してこの商品を購入し現在でも使用を続けています。
次に、がんの夫を在宅で介護している70歳代の女性の場合です。洗濯や炊事などの水仕事で皮脂が取れ、アカギレやひび割れをおこし非常に強い痛みを感じておられました。いろいろなハンドクリームを使用されたのですが変化がない状態でした。そこでセキューラPOを薦めたところ症状が改善され、大変喜んでいただきました。
在宅では高齢者が多い傾向にあります。皮膚が薄く乾燥しやすくかゆみを感じる方もいらっしゃると思いますが、そういう時にスキンケアやその商品について情報があるのとないのとでは全然違うと思います。今回ご紹介したセキューラPOは高い撥水性がありダメージを与えるものから皮膚を守ってくれます。ワゼリンが配合されていますので、最初はベタベタするのですが、時間を置くとすーっと中に浸透していき肌に潤いと弾力を与えてくれますので、私はとても使い勝手がいい商品だと思います。
この商品に限らずいい商品というのは、使用することで皮膚が強くなりかゆみなどをとるということ。また、それによって感染防止、介護負担の軽減、健康維持へとつながる商品だと思います。ただ、一般では購入が困難な商品もありますし、保険がきかない、情報が少ないというデメリットもあります。それらを改善する為に、インターネットや相談窓口を利用し、情報収集を積極的に行っていただきたいと思います。