福岡大学病院看護部 梶西 ミチコ 会長
このたび、第28回ストーマ・排泄リハビリテーション学会総会を福岡の地で開催させていただくこととなり、誠に光栄に存じます。
本学会は1990年に研究会から学会となりましたが、84年の発足以来、26年の歴史と伝統があり、我が国のストーマ・排泄研究の中心的役割を果たして参りました。これは、一重に諸先輩方、関係者の方々のたゆまぬご努力によるものであり、会員にとって誇るべき輝かしいことであります。
今回、このような幾多の実績を重ねてきた学会の大会長をお引き受けさせていただいたことは大変名誉であると感じると同時に、身の引き締まる思いでおります。また、本学会の開催にあたっては前田理事長を初め関係者の方々にご指導・ご支援を賜り、深く感謝申し上げます。
本学会のテーマは「広げよう!ストーマ・排泄ケアよかねットワーク」と致しましたが、それは次の様な理由からです。("よかね"は博多弁で「いいね〜」「良い」という意味があります。)
ストーマを持つ患者さんの中には90歳を超える方々も増えてまいりました。中には慣れ親しんだ家族と離ればなれだったり、死別されたりした方もいらっしゃいます。
高齢になった方々のストーマ管理では、時に他者の助けが必要になることも多いのが現実ですが、たとえ相手が医療者であっても支援を受けることをためらわれることもあります。そのような場合、私たち医療者は排泄という極めて個人的な行為を他人にさらすことに対する抵抗感を受け止め、それを超えた関係を患者さんとの間に作っていかなければなりませんが、これはなかなか困難な状況にあります。
それは、ここ数年の医療改革・政策誘導による入院期間の短縮、在宅医療への意向と、限られた時間の中での患者さんとの関係作り、ストーマ管理方法の取得が要請されているからです。患者さんが何とか助けを借りてストーマ管理できるようになったとしても、退院後の生活で、入院中には経験しなかったトラブルに見舞われることもあり、スキントラブルでストーマ外来に通ってこられるケースもありました。
この様な社会状況の中で、排泄障害やストーマを持つ人々がより良く生きることのできる環境を支える要素は何だろうと考えてみました。日頃行っている医療技術・技能を向上させるのはもちろん、この様な療養環境を見据えた援助のあり方を見いだしていくこと。特に、後者の生活、療養環境を見据えた援助方法の開発が重要になってくると思います。
患者さんが適切な医療・ケアを適切な場所で、適切な人によって受けることができる様にするには、医療機関から在宅療養支援機関へのリレーも重要です。そのため我々医療関係者には、同職種間、同施設内の課題だけでなく、他職種間、他施設にも目を向け、ネットワークをつくり、患者さんの生活を支えていくことが求められていると思います。
本学会が得意とする他職種の協働を発展させ、絆を深めていくことが、より良く生きることの出来る環境=人々が穏やかにつながる"よかねットワーク"を形成することにつながると確信しております。この総会において、皆様方の知識・技術・技能を公表していただき、ストーマ・排泄に関する知が創造されていくよう願っております。