第3回 福岡県医学会総会【シンポジウム】1

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脳卒中リハビリテーションと地域連携
産業医科大学医学部リハビリテーション医学 蜂須賀 研二 教授

産業医科大学医学部リハビリテーション医学 蜂須賀 研二 教授

脳卒中は死亡率が第3位と低下してきています。しかし脳血管障害の患者さんの受療率は第2位で、依然として大変重要な疾患であります。

以前は一つの病院で治療まで行っておりましたが、現在は地域完結型になり、急性期病院・回復期のリハ病棟を有する病院・維持期の治療を行うかかりつけ医の先生や、内科の先生が協力して連携しながら治療に取り組むようになりました。

そのときの重要なツールとして脳卒中地域連携パスというのがあります。95年あたりから試みがなされて、早いところでは05年くらいから用いられるようになりました。

北九州市においては08年の3月に北九州医師会が動きを開始し、6月に北九州市地域医療課のリハビリ支援体制検討委員会の中で医師会と保険福祉局、産業医科大学などが協力して作成することになりました。そして08年8月に標準モデルのバージョンを公開し、昨年の9月バージョン2に改定しました。

脳卒中地域連携パスに関しては急性期病院・回復期病院・かかりつけ医の先生方とで年3回協議会を開催することが義務付けられております。北九州では急性期病院全13施設、回復期リハ病院全18施設、かかりつけ医の先生方が50人程度参加して協議会を開催しております。他の地域と異なる特徴として医師会・行政・大学の3つが強力なサポートをしているというのが北九州のモデルではないかと考えております。

つぎに、産業医科大学のリハ科がどのような関与をしているか説明します。急性期病院に関しては重度障害の患者さんに対して、ロボット(機械)を利用した訓練をおこなっております。回復期リハ病院には、重度の片麻痺患者さんに頸頭蓋曲流電気刺激、磁気刺激、ボトックス治療などをおこないます。また、高頭脳機能障害に関する専門的な診断や治療、ロボット機器の開発等に関しても診療支援を実施しております。維持期の病院や医院はそれに加えまして、患者さんの二次障害に対する診察や支援、生涯の認定、リハ医療・生活指導などをおこなっております。

リハの医療関係者に対する研修の支援に関しては、北九州市の医師会が研修会を開催しております。年間1~2コマ産業医科大学でリハ医療や介護保険に対する内容の講演をおこなっております。この内容に関しましてe-larning教材を作成し、医師会の先生方やリハ関係者が自由に研修内容をインターネットを通して再確認できるようになっております。また北九州市医師会の中に北九州リハビリテーション医界という分科会を作っていただき、年3回の学会を開催しております。その中で実地医家の先生方に必要なリハの機能や知識に関する講演、シンポジウムをおこなっております。

これらを利用した脳卒中地域連携の役割を考えていきますと、脳卒中すなわち神経内科の先生、脳外科の先生の役割というのはおそらく急性期に特化した内容になります。もちろん回復期に関しましてもこれらの先生が診療されても良いのですが、実際の専門医の数と脳卒中患者さんの数から考えますと急性期に特化するほうが得策であると考えます。リハ医も急性期から回復期に関して診療をおこないますが、維持期に関して十分な診療をおこなうだけのスタッフはおりません。実際にこの連携パスを運用しておりますと、維持期の患者さんは内科の先生やかかりつけ医の先生が診療をおこなっています。

脳卒中の患者さんが発症して10年間生存するということを考えると、急性期から回復期すなわちたかだが6ヵ月間の診療を我々がおこなうわけであります。残りの9年と6ヵ月を診療される医師会の先生方、特にかかりつけ医の先生方の役割が大変重要であるといえます。北九州市の中で脳卒中医療を推進してまいりますと、医師会のかかりつけ医の先生方が脳卒中に関する内科的な管理やリハ的な助言をどうおこなうかというのが最も重要と考えております。医師会活動の中でかかりつけ医の先生方へのリハ医療の情報提供が最も重要な仕事と思って取り組んでおります。

脳卒中連携パスで最近の6ヵ月間の様子ですが、397名の登録がありまして急性期の段階で要介護車椅子の患者さんが、回復期を退院するときには大部分復興事実の状況となっております。

リハビリテーションについてです。推奨される脳卒中リハビリテーションとは、急性期は早期から積極的なリハの介入をおこなうというのが強く推奨されております。回復期では専門的集中的包括的なリハが進められ、十分な訓練量と訓練回数が必要です。維持期は体力・筋力・歩行能力を向上することが重要であり訪問通院地域リハの適用を考慮した対応をすることが重要とされます。

歩行障害では十分な歩行の訓練量を確保するのが重要ですが、診療報酬上の限度があります。十分量の訓練を提供する方法として、トレッドミル訓練や免苛式動力型歩行補助装置を使用し患者さんの歩行改善を手助けしております。

産業医科大学では安川電機と協力して歩行支援ロボットを作成しております。これは4本のロボットアームで足を動かし、全く立てない患者さんをロボット訓練装置で十分な歩行をおこなえるよう介助するというものです。この装置には能動歩行、能動介助歩行、自動歩行という3つの効果があります。自動的な歩行では全く脳が発達しないのですが、自分で歩こうとするまたは自分で歩こうとしてロボットが介助するというスタイルで訓練をおこなうと脳が発達しますので、現在は能動介助モードで歩行訓練をおこなっています。

歩行支援ロボット訓練による有効性の検証は無作為化の前向き比較試験でようやく最近終了しました。これは発症後4週以内で重度の脳卒中片麻痺の患者さんをロボット訓練郡と通常の訓練郡に無作為に分け、1週間のうち5日間、合計4週間の訓練をおこないました。訓練開始前と終了時に歩行能力に関する調査をおこなうと、2郡間では実は差はなかったのですが、ひ重度の患者さんの場合、ロボット訓練をおこなったほうが筋力が優位に増加し、歩行速度の増加が優位に大きいという結果が得られました。

最後に、北九州脳卒中地域連携パスは、医師会・大学・行政が参画し、特に大学が診療・研修の支援をするのが特徴です。脳卒中リハビリテーションは早期から介入し、十分量の訓練を実施することが重要であります。我々が試みている新しい治療法は、ロボット支援訓練、経頭蓋直流電気刺激、磁気刺激、ボトックス治療などであり、有効性が証明されつつあります。


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