腎移植の進歩と今後の課題

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名古屋第二赤十字病院 両角 國男 副院長

名古屋第二赤十字病院 両角 國男 副院長

【プロフィル】

両角 國男(もろずみ くにお)

名古屋大学医学部卒、名古屋第二赤十字病院副院長、名古屋市立大学医学部臨床教授、名古屋大学医学部臨床教授。1979~83年、名古屋市立大学医学部第三内科助手、83~84年、同大学病院人工透析部講師、84~00年、同人工透析部助教授、90~91年、スイス・バーゼル大学病理学研究所留学、02年~、名古屋第二赤十字病院腎臓内科部長、07年~同病院副院長。日本腎臓学会法人評議員、腎移植推進委員会委員長、日本移植学会理事、評議員、ドナー安全性委員会委員長、日本内科学会評議員、移植腎病理研究会代表幹事、日本臨床腎移植学会評議員、90年~国際腎臓学会の移植腎病理診断基準(Banff分類)会議に参加

― 済生会八幡総合病院講演会にて ―

本日は最新の腎移植情報を通して腎疾患診療に従事する医師として役割と具体的対応などについてお話しします。最初にわが国の腎不全総合対策の課題をまとめます。それは

  1. 腎不全への進行阻止(CKD対策)で、腎疾患の早期発見と早期治療が必要です。腎機能低下例には保存療法を強化します
  2. ②また、優れたQOL、ADLのために末期腎不全治療法の再構築が必要と考えます。

わが国の血液透析療法の実績は世界一です。しかし、長期透析療法の合併症が克服できないでいる。透析ライフ30年の壁は厚くて高い状態です。また腹膜透析療法の割合は小さく、腎移植の成績はいいが腎移植件数は少ないのが現実です。そこで良質な末期腎不全ライフ30年を目指すには何が必要なのか。結論をお話しすると腎移植の推進と長期成績の向上が望まれます。腎移植領域に精通する医師は数が少ないため、腎移植診療と推進を援助するのが腎臓内科医の役割だと考えます。

人工透析を受けている患者はもうすぐ30万人に達します。昨年の透析療法導入者数は3万7500人でそれに対して腎移植手術件数は1201件です。あまりに少なさ過ぎるのではないでしょうか。献腎移植件数も210と増えてはいません。

腎移植の種類ですが生体腎移植(健康な生体からの提供)と献腎移植(死体からの死後、善意による提供)の2種類があります。生体腎移植には親子、兄弟、祖父母などからの提供による血縁者間腎移植と配偶者などの提供による非血縁者間腎移植があります。献腎移植には臓器提供の意思確認後に脳死と判定されたドナーから摘出された腎臓の移植と、心臓が停止後に提供・摘出された腎臓の移植があります。

ただ、腎移植手術を受けられない基準(レシピエント基準)もあります。治療していない、または治療後間もない悪性腫瘍(癌、リンパ腫、白血病、肉腫)がある場合、慢性または活動性の感染症がある場合、全身麻酔を含めた大きな手術に耐えられない心肺などの合併疾患、献腎移植ではドナーのリンパ球に対する抗体を有する方(クロスマッチ陽性)などです。献腎移植レシピエント選択基準は適合条件としてABO式血液型が一致し、リンパ球クロスマッチが陰性であること。

移植の優先順位は以下の4項目を点数化し、合計点数が多い順となります。

  1. 提供施設と移植登録施設の所在地
  2. HLA抗原のミスマッチ数
  3. 待機日数
  4. 小児待機患者(16歳未満加点)

となっている。大人の患者さんが移植の登録をしてからの平均待機期間は16年と大変に長いのが現状です。

生体腎移植のドナーの適応条件(倫理的条件)は親族に限定しています。親族とは6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族を指すものとしています。このところ夫婦間での生体腎移植が増えています。これは腎臓摘出手術の85%が内視鏡下手術となりドナーの負担が少なくなり、入院期間も短縮されました。技術革新が進み3D造影CT、腎シンチにて提供する腎臓を決定でき、血管造影が不要となりました。

日本の腎臓移植件数は他の先進国と比べて桁違いに低いのが現状です。生体腎移植でも人口比にすると日本はアメリカの4分の1でしかありません。日本の社会にはDONATION(寄贈)の精神が希薄なのかもしれません。

日本の移植症例の約50%が10%の移植施設で行われています。年間20例以上の腎移植を行う施設は11%しかありません。これでは医療従事者が腎移植に触れる機会が非常に少ないことになります。医療関係者は腎不全の患者さんに「移植という治療もあります」との情報を正確に伝えることが重要ですが、最新情報を簡便に入手できません。

講演会イメージ

講演会には多くの医療関係者が集った

2000年以降、腎移植はまったく新しい局面を迎えました。新たな免疫抑制療法の時代に移ったのです。当病院では免疫抑制剤の使用法を工夫し、血中濃度管理による強力な組み合わせ療法を続けています。こうして移植された腎臓の生着率は術後1年で99%、5年で95%、10年で93%となっています。だから手術を受ける患者さんに「成績の良い安心できる治療法です」ときちっと伝えるようにしています。

古典的免疫学ではABO血液型不適合腎移植は禁忌でした。しかし、ABO血液型不適合腎移植は日本から世界に広がって行きました。ABO血液型不適合生体腎移植は臓器不足と移植成績の向上に伴い最近では生体腎移植の20%以上を占めるまでに至りました。この分野では日本が最初にトライし世界をリードしています。

我が国の望ましい腎不全総合対策のためには多くの腎臓病に関連する医療従事者が最新の腎移植成績を理解し、腎不全患者さんにお伝えし、治療選択を支援することが重要です。


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