年頭所感
新年あけましておめでとうございます。
2011年はどういう年になるのか。雑誌などで予想されていますが、私は逆にどう変えたいのかが大事だと思います。というのも、一昨年は半世紀以上続いた政権が、変化を求める国民によりあっという間に交代したからです。
今次国会は医療・介護の重要法案が審議されます。医療関係者、患者、国民にとっては死活的な影響があります。
昨年の診療報酬改定は実質ゼロ改定でした。一昨年の衆院選で与党が政権をとったときのマニフェストはOECD加盟国並みに医療費を上げるということでしたから今更財源がないと言われても困ります。診療報酬は健全な医業経営と医療従事者の労働条件、リハビリ制限のような医療内容まで規定しているからです。来年は大幅な診療報酬改定があると言われていますが、今の様子ではマイナス改定にならないという保障はありません。
審査、指導、監査大綱も見直すべきでしょう。個別指導は懇切丁寧な指導に徹して、高点数を選定対象にせず、自主返還を強要しない。重すぎる監査処分を正し、処分規準を明文化する。
後期高齢者医療制度も保険料が払えない人が多くいます。その人たちに短期保険証を発行していますが、福岡県は全国2位という多さです。2013年には国保に組みこむそうですが、今のしくみは温存されますので、保険料は上がるし、何らかの診療報酬抑制策も出てくるでしょう。
介護保険も保険料が上がっています。これから生活支援縮小などのサービス抑制と利用者負担増などが論議されます。民間保険型考え方ではどうしてもこうなります。介護保険の発足時には家族でなく社会が高齢者をみると大見得を切ったのですから、利用時負担が払えないようでは約束違反です。
4段階税制の廃止や事業税徴税も議論されるかもしれません。診療報酬抑制と同じように、医業経営を圧迫します。医業収入減少の下では、4段階税制の利用者は2割近くになるのではないでしょうか。消費税増税もこたえます。レセプトオンライン義務化の問題のときに、これを機に廃業や引退を考える医師が多くいたように、税金で嫌気がさし、やめる人が増えては地域医療にとっての一大事です。
私どもの会員アンケート調査では、この半年間に主に経済的理由からの治療中断例は31%の医療機関が経験したと回答しています。検査や治療、投薬を断られた医療機関は49%です。その中には胃がん、肺がん、肝細胞がん、前立腺がんの骨転移などもあり、命がけの中断ともいえます。無保険や短期証、生活保護の患者さんが増加しているという指摘も多くありました。患者負担軽減は天の声と思いますが、70~74歳の2割負担化の動きなど逆流があります。決り文句の"財源がない"というのも80年代の税制に戻し、財政に1兆5千億円の穴を空ける法人税5%減税も正当な理由がありません。
今年は医療界の一致した運動で、社会保障の充実した希望ある日本にしたいと存じます。よろしくおねがいいたします。