週3回1回6時間以上、または週合計18時間以上を実現
田川市立病院腎臓内科 成清 武文 先生
「透析時間と透析回数の考察」
市中郊外を問わず数多くの透析施設が存在する今日では想像しがたいが、わが国で透析療法が開始された70年代初頭は透析機器が不足していたため、より多くの患者に透析療法を提供するためには個人の透析量が不足するというジレンマが存在した。その中で我々の先達はこのように判断された―
「私はfirst come first serviceのkloffのやり方ではなく患者選択をしてでも良好に管理しようとしたScriber方式を是とした。(すなわち)透析患者数は少なくなっても、それぞれの患者に週3回6~8時間と十分の透析を祭日も関係なく規則正しく供給することとした」(藤見惺先生「わが人生を振り返って」より)
その後およそ40年にわたり確固たる治療方針が貫かれ、すばらしい治療成績が報告されている。日本の透析患者の生命予後が世界でもっとも良好であることが明らかとなったDopps(Dialysis Out come and Practice Patterns Study)(Goodkin Da JASN,2003)も、この治療方針の正しさを追確認するものであった。先達の直接指導を受けていない世代の医療者も良好な血圧、貧血、リン、長期合併症のコントロール、そして顔色のよい、それらの患者さんをみることで長時間透析の素晴しさを理解することができる。
このようにわが国では長時間透析の利点はすでに広く十分に理解されていると考えられる。しかしながら全国的な透析時間は平均値としては必ずしも延長していない。
長時間透析を必要としない高齢者が増加しているのも一因であり、一方で患者が長時間透析を望みながらも、仕事の時間と透析施設の時間帯が合致せず十分な透析スケジュールを組めないケースもある。いま透析に関わる医療者には患者の身体状態に加え生活状況を理解し、より適切な透析モダリティーを選択し、社会・医療資源を柔軟に駆使して、透析療法と患者の社会生活を馴染ませていくアレンジ力が求められている。
「時間と回数」に注目して各透析方法の長所、短所、課題を再検討し「週3回1回6時間以上、または週合計18時間以上」を実現する方法を考えたい。