「心の健康」を保ち、生きがいのある人生を送るためには
久留米大学医学部 神経精神医学講座 内村 直尚 教授
精神科医の立場から心と脳の健康が大事であることをお話しします。まず日本の現代社会は高齢化社会、核家族社会、ストレス社会、24時間社会、夜型社会です。その中で生きがいのある人生を送るには心と脳が健康でなければなりません。
しかし、50~60歳になると加齢による様々な喪失体験があります。
①まず役割を失う。定年退職で仕事を失う。女性の場合は子育てを卒業し、息子が進学したり結婚し、大事な息子を嫁に奪われるのは夫を失うより大きな喪失体験となります
②配偶者や両親、兄弟、友人など身近な信頼できる人を失ってくる
③人間関係ですが男性の場合は、職場での人間関係しかなく退職と同時にすべての人間関係を失い鬱になる。だから男性は弱いと言われる。また地域の人間関係は女性の方が持っていることが多いが、それも失ってくる
④将来への夢も多くの人が失う
⑤健康
⑥体力、気力
⑦そして性もです。女性だと月経がなくなり女性性を失い、男性は勃起しない、射精できなくなりとても大きな喪失体験となります
⑧ストレス耐性も弱くなります
⑨睡眠や昼夜のリズムもメリハリがなくなり簡単に昼夜が逆転してしまうー。
ほかにも喪失はありますが、加齢によってこれほど大きな喪失体験があります。(中略)加齢やストレスと上手に付き合い、健康で生きがいのある人生を送る方法ですー。
①適度な睡眠を確保する。昼間の活動性の上昇や短時間の昼寝もいい
②生活リズム(睡眠リズム)の乱れを防ぎ、規則正しいメリハリのある生活をする
③「考え方」を見直すのです。それには
- がんばりすぎない。自分の限界を知り完璧を目指さない
- 断る勇気を持ちNOと言える人になる
- 周囲の評価を気にせずに自分を褒めてあげる
- 鈍感力を持ち敏感になりすぎない
④ストレス対処法を身につける
- 散歩、運動、趣味などのリフレッシュタイムを作る、就寝前に音楽、読書、アロマなどリラックスタイムを持つ
- 家庭や職場以外の人とネットワークを作る(地域のサークルや趣味の仲間を持つ)
- サポートシステムを作る(とても大事なことですが愚痴をこぼせる友人を多く持つことです)
⑤目的や楽しみをもって生活し、自分の存在意義を確認すること
―以上です。