社会福祉法人浴風会 京極 髙宣 理事長
世界に先駆けて超高齢化社会を迎える日本。誰もが健康で生きがいのある生活ができる社会を目指すために学会は発足した。平成2年、老人福祉法が改正される際、基本的理念の条文に初めて「生きがい」という平易な言葉が取り入れられた。財団では、健康と生きがいを表裏一体のものとして捉え、誰もが高齢期を健康で生きがいを持って過ごせる心豊かな高齢期社会を実現するための努力を続けている。
長年、福祉実現のために働いてきた㈶健康・生きがい開発財団、辻哲夫理事長は「WHOが健康について"身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、単に病気あるいは虚弱でないことでない"と定義しているように生理的に健康であることだけが幸せとはいえません。むしろ生理的な健康だけではなく、心がときめく(ワクワクする)ような心を持てることこそが幸せと考えます」と話す。
具体的活動として人材育成に重点を置きベテランによる「健康生きがいづくりアドバイザー」や若い「生きがい情報士」の養成に取り組み、九州では久留米大、長崎国際大などが生きがい情報士の養成指定校となっている。
「健康生きがい学会」では高齢者を取り巻く社会経済面、個人の意識面でも多くの転換期を迎えているのではと指摘する。従来の生産年齢人口と老年人口の区分では65歳以上を高齢者としているが、75歳以上を真の高齢者と考えるのが現状に即しているのではと考える。
65~74歳はいわば熟年後期(later half of middle age)で豊富な経験と活力がありこれらの人材を広く活用することが重要。そうすれば安定した世代間関係が21世紀後半にも保たれる。そうして今後の高齢化社会のあるべき姿―自立と共生の社会―を示すことは国際的にも先駆的な意味合いを持つという。
だが、高齢期特有の問題は一つの領域では解決できない。医療、福祉、教育、心理、法律、経済などあらゆる領域の知を結集した学際的な研究が必要となってくる。「学問の領域だけでなく産学官民と連携しながら高齢化社会のあるべき姿を示していくために、学会は微力ながら努力を注ぎます」と京極会長は語った。