第30回日本精神科診断学会【会長挨拶】

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精神科学会の根拠と理論 九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野
神庭 重信 教授

九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野 神庭 重信 教授

本日、九州大学医学部百年講堂におきまして第30回日本精神科診断学会が開催されるに当たってお礼を申し上げます。

現在、DSM-VとICD-11の制作が行われつつあり、3~4年のうちには完成するようです。使いやすくするための細部の改訂であれば十分なエビデンスがなくとも集合的・集約的意見により、あるいはアドボカシーなどさまざまな思惑により修正が加えられても良いと思います。精神科診断はさまざまな形で時代を取り込んでゆくものです。しかし、診断骨格の大きな改訂は説得力ある臨床データに基づくべきでしょう。

問題は誰が何を取り込んでいくかです。DSM-Vはそもそも米国精神医学会が作成するものであり、今回のICD-11制作では英国の主導権が強いと聞いています。近年の臨床データのほとんどがそれらの国で生まれているのだから当然なのかもしれません。しかしながら、その他の地域からも制作者たちが気付かない盲点や重要な文化差について、意見などパブリックコメントが積極的に行われるべきでしょう。

診断基準ができあがると日本語に翻訳されそれをめぐってあれこれ国内で議論が沸騰するでしょう。しかし、診断をめぐる議論は常にされるべきものです。そして実質的な議論のためには、精度の高いエビデンスが必要です。バイオロジカルマーカーが見つかれば診断が大きく変わることは間違いありません。しかし、研究対象が不均質な場合、精度の高いマーカーを見いだすことは困難です。化学物質の分析と同じです。混ざりものを分析していても目指す物質の真の性質を決定することができないようにまずはピュアな物質を抽出する必要があります。

たとえば内因性うつ病と神経症が混ざる大うつ病を対象としてマーカーを見つけるのは容易ではありません。統合失調症にしても、妄想型と解体型が全く同じ疾患のようには思えません。どこが類似しているのか、どこが異なっているのか、なぜ1つのグループにするのか、なぜ別のグループに分けるのか。マーカーの研究と並行して、地道なエビデンスの構築と議論が必要です。

30周年を記念する今回の年次総会は精神科診断の基盤にある根拠と理論を考える学会とし、参加される方々には新たな研究の方向性を考えていただきたいと思います。そして将来の国際診断基準の改訂に際しては、日本からも骨格を変えるような重要なエビデンスを発信してゆきたいものです。

総会の会期の博多は冬を迎えつつある一年でもっとも食事の美味しい季節です。博多の食と文化、そして人情味溢れる人々との交流を存分にお楽しみいただきたいとおもいます。


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