「酸化ストレスと緑内障を考える」
学会2日目、モーニングセミナー「酸化ストレスと緑内障を考える」(第21回日本緑内障学会・興和株式会社共催)が開かれた。午前7時50分開始と早朝の開催にも関わらず約100人が参加し熱心に耳を傾けた。
セミナーの冒頭、座長で本学会の会長を務める田原昭彦産業医大教授が「緑内障の進展を抑制するには眼圧降下が唯一のエビデンスですが、各種臨床試験の結果から眼圧以外の因子も関与していることが明らかになっています。実際の診療でも眼圧下降を第一に行っていますが、眼圧下降治療の先にはどのようなものがあるのでしょうか。
本日は緑内障に詳しい宮本、中澤両先生に『酸化ストレス』をキーワードにお話しいただきます」と講師を紹介した。
はじめに、産業医科大学眼科学教室の宮本直哉医員が「緑内障と抗酸化ストレス療法―線維柱帯細胞を中心に―」と題して講演。まず「酸化ストレス」とは何であるのか定義について解説し、酸化ストレスの線維柱帯細胞への影響とそれに対する抗酸化ストレス療法について講演した。
タバコ、排気ガス、紫外線などの酸化ストレスが白内障・緑内障・加齢黄斑などの病気を引き起こす原因となること、そして柑橘類に含まれる抗酸化酵素(カタラーゼ、ペルオキシレドキシン)が抗酸化ストレス作用を増強することなどを話した。開放隅角緑内障の眼圧上昇メカニズムなどの研究データ等も提示しながら解説した。
その後、東北大大学院視覚先端医療学講座の中澤徹准教授にバトンタッチ。「網膜神経保護治療と酸化ストレスとの接点」と題して、酸化ストレスの網膜神経節細胞への影響を含む眼圧以外の因子と緑内障の関係について講演した。
緑内障治療薬(ニプラジロール=興和創薬)がFoxo3a/PRDXの発現を誘導すること、さらに酸化ストレスを防御する効果があり抗酸化ストレス作用が増強されることを分かりやすく解説した。
中澤准教授は神経科学、特に網膜を中心とした細胞保護などが専門。眼圧を離れた立場からの示唆に富んだ講演に参加者は熱心に聞き入っていた。
約50分間の限られた時間ではあったが密度の濃い内容で、今話題の「酸化ストレスと緑内障」についての理解が深まる内容だった。