(財)福岡県すこやか健康事業団会長・(財)日本対がん協会福岡県支部長
原 信之 先生
1960年、がん征圧月間を9月に定め、日本対がん協会を中心に始まったがん征圧運動も半世紀が過ぎた。増加するがんの征圧に向けた運動が、国民を巻き込み、ますます活発になってきていることは誠に喜ばしい限りである。
この月間の最大のイベントである全国大会も、日本対がん協会と開催県の支部が中心になり厚生労働省、日本医師会、県、県医師会などの後援を受け10日に福井県で開催された。この大会での宣言書、決議は要望書として国に提出され、今後の運動に生かされることになっている。
さて、医学の進歩でがんの約半数は治る時代となったが、高齢化、生活習慣の変化などにより、がんは増加の一途を辿っている。今や罹患数は年間約64万人、死亡数は34万人に達し、生涯で2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで死亡する時代となった。これまでも、1~3次対がん10か年戦略が出され、わが国のがん研究、がん医療は著しく進歩してきた。
このような流れの中で、がん患者や家族の強い要望もあり、07年4月に「がん対策基本法」が議員立法で成立した。この中には、地方公共団体、医療保険者、国民、医師のがん対策に対する責務が明記されている。
「がん対策基本法」については、九州がんセンター院長(岡村健先生)のインタビューで詳しく述べられているが、要約すると「がんの予防と早期発見」、「医療の均てん化」、「がん研究の推進」を3本柱とし①10年間に75歳未満のがん死亡率を20%減少させること②がん患者及びその家族の苦痛並びに療養生活の質の維持と向上を図ることを目標とし、具体的な方策が立てられている。
いよいよ、国と医療従事者、そして国民が一体となり、同じ方向を向いてがん医療を変革していこうとする確かな動きが始まったのである。
今年もがん征圧月間を迎え、私どもも県、県医師会などのご支援を受けて11日に「平成22年度がん征圧の集い」を開催。がんの予防と、がん検診の重要性を訴えた。
がんは、禁煙を第一に、食生活の改善、運動、感染症対策などによって70%は予防が可能である。ちなみに、成人の喫煙率を現状の半分にすると1.6%、4分の1にすると、がん死亡率は2.9%低下する。一方、がん検診受診率を現状の20%台から50%台にすれば3.9%、75%まで上げれば6%も死亡率が低下するといわれている。「がん対策基本法」が成立し、いよいよ3年目に入る。目標達成に向けて、われわれ医療従事者の責務は大きい。