京大医学部を卒業、医師国家試験に合格した異色の経歴を持つプロ棋士、坂井秀至八段が、8月27日、第35期碁聖戦第5局で4連覇中の張栩棋聖を下し、初の七大タイトルを奪取した。
坂井碁聖は、産婦人科医でアマ四段の父の手ほどきで7歳から囲碁を始めた。全日本アマチュア本因坊戦などで活躍し、数々のアマチュアタイトルを手にした。00年には、世界アマチュア囲碁選手権に日本代表として出場し、世界一の栄光にも輝いている。
01年、医師国家試験に合格、京大付属病院での勤務が決まっていたが、棋士になる夢をあきらめきれず、プロ編入試験を経て同年9月、28歳でプロ棋士の仲間入りを果たした。
タイトルを獲得したばかりの坂井碁聖に話を聞いた。
碁聖タイトルを初挑戦で獲得した現在の心境を「幸運にも大きな結果を出せて良かった。ただ、プロ棋士としてまだまだ実力不足。これに満足せず、さらなる精進に励みたい」と語った。
自身の碁を、終盤の「寄せ」に強い粘り強い碁だと分析する。医学部時代のハードな勉強で鍛えられた経験は、体力面でも精神面でも今の碁に生きているという。
また「まずは碁聖タイトルを防衛すること。そして、他の棋戦でもタイトル争いに絡む常連になって囲碁界を賑わす存在になりたい」と抱負を語った。
休日は、近郊の温泉の立ち寄り入浴でリフレッシュ。長時間に及ぶことも多い対局に備え、毎日5キロのジョギングを欠かさない。妻と1歳の息子の3人家族。兵庫県出身、37歳。