九大アジアセンター廃止に惜しむ声続々

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2005年7月に設立され、経済連携協定(EPA)による東南アジア諸国からの介護・看護労働者の国際移動の問題や日中韓のメディア文化、産業協力など幅広い分野で研究成果を上げてきた九州大学アジア総合政策センターが6月末で活動を終了した。九州におけるアジア研究の拠点であっただけに、アジア研究者の学外流出やアジアの研究機関との連携停止が懸念される。学内外からセンター閉所を惜しむ声が上がり、主要全国紙がこぞって取り上げるなど閉所から約3ヶ月が経過した今も波紋を広げている。大野俊前センター長(現京都大学東南アジア研究所特任教授=写真)らに話を聞いた。

大野俊前センター長(現京都大学東南アジア研究所特任教授)

大野教授は、毎日新聞マニラ支局長など歴任。退社後、海外留学などを経て、06年、九州大学アジア総合政策センター教授に就任。09年1月からセンター長を務めた。研究テーマは、ケア分野における労働者の国際移動、日系人の日本「帰還」現象、メディア文化を通しての日中韓連携など。

この5年間の活動を振り返り、計4回開催した「日中韓シンポジウム」、国内外の研究者とその成果をまとめた共著本「東アジア地域連携シリーズ」5冊の刊行、ケア分野での数十の論文や報告書の作成、高樹のぶ子特任教授の「アジアに浸るプロジェクト」などを主な実績として挙げ「学内では、医学研究院、人間環境学研究院、応用力学研究所など複数の学内研究機関にまたがってアジア研究の集積が進んだ。対外的には、中国社会科学院、東国大学校(韓国)が心強いパートナーになり一種のコーディネーター的機能も果たした。テーマによっては、北京大、上海交通大、ソウル大など中韓多数の大学や研究機関との橋渡しをしてくれた」と語った。センター閉所について「私の着任時は、大きなプロジェクトは緒についたばかりだった。その後、複数の外部資金も獲得し、研究がようやく軌道に乗り、国内外の大学や研究機関から提携や連携の申し出も相次いでいただけに、残念至極。東アジア学術文化の拠点化を九大に進言していた青木保・前文化庁長官はじめ、国内外の関係者から廃止を惜しむ声が続々と寄せられ、周囲のショックは私たちの予想をはるかに上回るものだった」と語る。

地元関係者の一人、麻生塾法人本部企画・渉外室長でNPO法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター(AABC)理事の清崎昭紀氏は「多分野のオピニオンリーダーが集結し、研究データも蓄積されていただけにセンターの廃止は残念。九州からアジア研究の拠点がなくなり、中央との情報格差が広がることを危ぐしている」とし「今後は、センターが果たしてきた役割の一部を我々(AABC)が担っていかなければならないと考えている」と語った。

一方、九州大学の秋山和男国際部長は、本紙の取材に対し、センターはもともと5年の期限つきプロジェクトで、6月末の閉所は当初のスケジュール通りであったとし「九大からアジア研究の場が消えたかのような誤解があるようだが、センターに蓄積された研究データや人的ネットワークは、学内の研究者に引き継がれている」と強調した。また"アジアに開かれた大学"としての今後の方針について「ひとつは、アジアからの留学生の積極的な受入れ。アジアとの関係は今後ますます深まると考えている。多岐にわたるプロジェクトが進行しているが、医学分野では大学病院の『アジア遠隔医療開発センター』が挙げられる。アジアを中心とした国際連携を進める方針は今後も変わらない」と答えた。

現在、福岡では大野教授ら研究者と民間企業の関係者で作るグループが、センターの研究成果の一部を海外からの介護人材受け入れに生かすプロジェクトを進めているが、九州から研究拠点が失われたことは大きな痛手になっている。九大で同時期に創設された他の理系4研究センターのうち2つは規模を縮小して活動を継続中。組織を再編してでもアジア地域研究のハブを存続させる道を探ることはできなかったのか、センター廃止の今回の決定には疑問が残る。


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